宝物小説
□献帝 meets 呂布軍
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陛下、お元気にしていらっしゃいますか?
私は毎日とても楽しく過ごしております
もしお近くにお越しの際は、ぜひ下ヒ城にお立ち寄りくださいませ
郵便受けの中に入っていた手紙を見て献帝は喜んだ。
ダイレクトメールでもなく請求書でもない、普通の手紙を貰えたことが本当に嬉しかった。
しかも、差出人は長安にいた頃、一緒に遊んでくれた貂蝉だった。
「懐かしいなぁ、貂蝉ちゃん。今もすごく美人かな……ぐふふ」
手紙を読みながら昔のことを思い出しているうちに、なにやら無性に貂蝉に会いたくなってきた。
「よし。どうせ暇だしやることないし、貂蝉ちゃんに会いにいこう!」
即決した献帝は一泊分の荷物を素早くまとめると「ちょっと出かけてきます」と書き置きして許昌を出発した。
スーツケースをガラガラと引きずり、下ヒ城に辿り着いた献帝は城門を太鼓の乱れ打ちのようにドンドコと叩いた。
「おーい、おーい、開けてたもー!」
すると、扉の横に付いているインターホンから声が聞こえてきた。
「やかましいですねぇ、セールスでしたらお断りですよ!」
「セールスではない、朕は帝じゃー」
献帝はインターホンにではなく、城門に向かってありったけの大声で答えた。
それを受けてインターホンがプツッと切れたかと思うと、慌ただしい足音が聞こえてきて扉がゆっくりと開いた。
「も、申し訳ございません。皇帝陛下がいらっしゃるなんて存じていなかったもので……」
「ごめんなさい、朕も突然来ちゃったもので」
扉を開けながら必死で謝っている陳宮を見た献帝は、つられて同じように何度も頭を下げた。
「あの、ところで陛下、このような汗臭い体育会系な城に一体なんのご用でしょうか?」
陳宮が両手をハエみたいにすりすりしながら尋ねた。
「ええっと、貂蝉ちゃんに会いに来ました」
「ああ、そうですか。あいにく貂蝉殿は今、買い物に出かけておりますが……すぐに戻ると思いますのでどうぞ中へ」
陳宮に促されて献帝は城の中に入った。
汗臭い体育会系な城と言っていたが、花が飾られていたりレースのカーテンが掛けられていたり、それになんだかとてもいい匂いがしていた。
たぶん貂蝉の趣味なのだろう、パステルカラーのえらくファンシーな城だった。
献帝は、いちばん奥の部屋に通された。
「今、主の呂布殿を呼んできますのでお待ちくださいませ」
「あ、はい」
呂布と言われて、そういえば悪魔みたいな董卓をやっつけてくれたのにお礼を言うのをすっかり忘れていたなぁ、と今ごろ気づいた献帝だった。