【バターがスーパーから姿を消しました】




「バターがない。」

突然ソレ☆スタの部室に紙袋を持って入ってきた録音はそう呟いた。

「………。」

その落胆の大きさにアーデとアレルヤは顔を見合わせ首を傾げる。

「どうしたんだ。一体何があった。」

アーデが問掛けると録音はのろのろと椅子に座り、溜め息をつく。

「ケーキを作ろうと思っていたんだけどバターがなくてな。あっても高いヤツなんだ。」
((主婦か、この人は。))

そう思いつつ、アーデが意見を言う。

「別に高くてもいいだろう。君はギャラ………ではなく給料をもらっているのだから。」

その言葉に録音は思わず録音は立ち上がりアーデを指差しながら叫ぶ。

「俺は教師だぞ。そんなに貰えるわけないだろ!唯一の趣味のエアガンも全て没収された俺の気持ちがお前に分かるものか!」
「クランクアップした人間が何をいう。第一没収されたのは学園内で生徒に向けてエアガンを打っている君自信の責任だろう。」
「クランクアップってなんの事だよ!俺はまだ回想シーンで出てるんだよ!」

録音とアーデの口喧嘩にアレルヤが口を挟む。

「じ、じゃあ何を買ってきたんですか?」

録音の手元には大きな紙袋が提げられていた。確実に食品をいれる袋ではないが。

「よくぞ聞いてくれた。これはだな………。」


「機○戦士ガン○ム0○のDVDだ!」



「え?」

アレルヤは思わず問いかえしてしまった。
刹那だけでなく録音までガンオタになってしまったのではないかと不安になる。

「録音先生……。なんでDVDを………。」

恐る恐る訪ねると録音は遠い目をする。

「ほら、俺が出張でいなくなったときとか皆が寂しくならないようにと思ってな。」
「え!23話のアレッて出張だったんですか!?」
「そうそう、アレが一番早い地上への降りかた………ぐはっ!」

アーデから鞄を投げつけられ顔面直撃した録音は背後に座っていた刹那と共に倒れた。
録音は完璧に伸びている。だが、その下で潰れている刹那から声が聞こえ思わずそこを覗きこんだ。

「エクシア、エクシア………。」

そこには録音が倒れたの反動で転がったプラスチックの塊(もとエクシアのガンプラ)を見つめている刹那姿があった。
アレルヤはその姿を見て思わず視線を反らす。
アレルヤの良心がズキリと痛んだ。

(あぁ、ハレルヤ、皆が病んでいるよ。)
「刹那のガンプラを溶かしたのは君だろう。それに一番君が病んでいると思うがな。」

アーデのツッコミなんてアレルヤの耳には届かず何かブツブツと呟き始める。
そんなソレ☆スタメンバーを見てこの部活はホントに大丈夫なのだろうか、本気でアーデは心配しているのだった。



「バターがない。」

一人の青年がバター売り場の前にやって来てそう呟いた。
褐色の肌を持ち、目元にはほくろのあるその青年は悩むような仕草を見せる。

「兄貴〜。小麦粉これでいい?」
「ヨハ兄〜砂糖ってこれ?」

白い肌を持った男女がその青年を兄と呼びながら近づいて来る。
青い髪を持った青年の手には片栗粉、赤い髪を持った少女の手には塩があった。

(何をつくるつもりだ?確かパンを作るはずだったが………。)

兄と呼ばれた彼、ヨハンは溜め息を吐く。

「兄貴?」
「ミハエル。お前…片栗粉持ってきてるぞ?ネーナも砂糖を持ってこい。」
「えっ、嘘!」

ヨハンが取り替えてこい、と無言で言うと、二人に背を向けてマーガリンの棚に目を移す。そのときだった。

「兄貴……騙しちゃあ行けねぇな。」
「は?」

ミハエルの一言にヨハンは振り返る。

「実はこれは片栗粉と見せかけて小麦粉なんだ!!!!!」

べしゃっ。
ヨハンは思わず手近にあったトマトをミハエルに投げつける。

「馬鹿なこと言ってないでどんどん代えてこい。ネーナはとっくに変えてきたぞ。」
「だって兄貴!ここに『小麦粉』って書いてあるぜ!?」
「それは『小麦粉入り』と書いてあるだけで商品は片栗粉だ。」
「なんだと!クッソー、トラップかよ!」
「ヨハ兄変えてきたよ〜。」

そこにネーナが戻ってきて、籠の中に何かを入れた。

「ネーナ。」
「な〜に〜?」
「これはなんだ。」
「昆布?」
「何故パンを作るのに昆布が必要なんだ?」
「えぇ!パンを作るの!?夕飯の水炊きじゃなくて!?」
(根本的な間違いか!!)

一人で突っ込みを入れて頭を抱えているといつの間にか隣に来ていたミハエルがポン……と肩を叩く。

「兄貴………。」
「ミハエル。」

今度はしっかり持ってきたのかと少し期待していたヨハンだったが…………。

「ドンマイ(^o^)/」
「白玉粉じゃなくて小麦粉を持ってこい!!!!」

こうしてバターがなくなったことにより彼等の生活は確実に乱れつつあったのだった。




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