□ハンモック
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「ベッドが壊れた!?」

「「「…はい」」」

「こんのっ…!!」

バコッボコッドガッ

たんこぶを作って涙目になるのは、ルフィさんとウソップさんとチョッパーくんだった。
ナミさんの拳の威力は本当に偉大だと思う。

「どーすればあんた達は勝手に女部屋に入ってベッド壊すの!?」

「だってよぉ!チョッパーの奴が鬼ごっこで女部屋に入るから」

「お、おれのせいなのか!?ウソップが全部屋OKって」

「おいおい!それはルフィが大々的にやろうって言ったからで」

「言い訳なんかどうでも良い!!」

バコッボコッドガッ

「「「ずみ"ま"ぜん"でじだ!!」」」

「ナ、ナミさん?その辺にしてあげ」

「ビビ!」

「はい!」

「あんた、気付いてないでしょ?」

「え?」

ナミさんは腕を組んで溜息した。

「ベッドが壊れた。つまり、あたしとあんたは男子部屋でハンモックなんだからね!?」

「………えっ!?」

私は瞬きを繰り返した後にルフィさんたちに目を向けた。

「じゃぁ…ルフィさんたちは?」

「どっちにしろ今日はウソップが見張りの日でしょ?残る二人も甲板で寝てなさい!」

「「はいぃ…」」

こうして、私は人生で初めてハンモックで寝ることになったわけで。




――――――――――
―――――――
―――――


しかし、

(…眠れない)

ハンモックでゆらゆら揺れながら天井を見つめていた。
ナミさんは眠ったようで静か。
結局、ミスター武士道もサンジさんも表で寝ている。
武士道は「またナミが喧しそうだから」と自分から出て行ったけれどサンジさんは「嫌だぁあ!!」としばらく喚いていた。←

(…少し外の空気を吸おう)

私はそう決めて起き上がり、静かに部屋を出た。
すると、すぐ横で壁に寄り掛かりながら毛布にまるまった武士道が眠っていた。
どうやら熟睡の様だった。
甲板に出れば星空の綺麗な下でルフィさんとチョッパーくんが大の字で眠っていた。
私はその二人に肩にかけてきた毛布をかけた。
空からは気持ち良さそうないびきが響いてきてウソップさんの安眠もわかった。

私はうんと体を伸ばして深呼吸した。
夜風が気持ち良い。

(………星)

夜空の美しい光景は何度見ても感動する。
こんな美しい空がアラバスタにも繋がっているのだと思うと自然と笑みがこぼれた。

「風邪ひいちゃうよ」

不意に掛かってきた肩の毛布に顔を向ければサンジさんがニッコリ立っていた。

「ありがとう…起こしちゃいました?」

「いや。眠れなかったんだ」

「ごめんなさい、私がハンモックを使ってるから」

「違う、違う!そんなんじゃないんだ!ナミさんやビビちゃんが寝てるんだなぁ、て考えたら色々と妄想が」

「………」

「…すみませんでした」

「っフフフ」

私が笑えばサンジさんも照れたように笑いだした。

「ビビちゃんも眠れないの?」

「はい…私、ハンモックで眠るの初めてなんです」

「あぁ、だからか」

サンジさんは「じゃぁ…」と腕を広げた。

「おれの胸のな」

「そろそろ寝ます」

「ぇえ!?」

「フフフ、サンジさんったら」

私は肩にかかった毛布を取って返そうとした。

「あ、それはビビちゃんがかけて寝な」

「え…でも、サンジさん外で眠るんでしょ?」

「ビビちゃん、アホ共に毛布かけたから無いだろ?かけな」

サンジさんの優しさが胸に染みて、私は「…はい」と頷くしかなった。

「じゃぁ、そろそろ寝た方が良いよ」

「………サンジさん」

「ん?」

私は毛布を畳んでサンジさんの前に差し出した。

「ビビちゃ」

「今日は特別です」

「え?」

私はフフフと小さく笑った。

「ハンモックじゃ眠れないんです。一緒に…寝てもらえませんか?」

「えっ!?そ、そりゃ大歓迎だけど…おれ?」

「サンジさんが私のせいで風邪ひいたりしたら嫌ですし」

サンジさんは「平気だよ」と笑った。

「…それに」

「それに?」

私は人差し指をサンジさんの鼻先に当てた。

「手なんか出さないって、信じてますから」

私の言葉にサンジさんは一瞬キョトンとした後に頭をかいた。
ハンモック
(…ビビちゃん)
(はい)
(おれ…すっげぇドキドキしてる)
(フフフ、私もです)
おわり
 

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