Atonoment Wings 3
□三章 発生
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四都市同盟フィル。この市街地はホテルなどの設備が多くさらには劇場酒場屋台…とまさに観光客にうってつけの街といえるだろう。大勢の人で街路も賑わいもう日が暮れたにも関わらず街は街路灯や出店の光で溢れていた。
「うわ…本当に人多い────メノウちゃん大丈夫?」
「……………うん」
その人ごみの中で二人組の少女───シャルルとメノウもいた。ホテルで部屋をとった二人はせっかく外国にまで来たのだから外に繰り出そう、ということになったのたが予想以上の人の多さに悪戦苦闘していた。なにしろ通りが人でいっぱいのためまともに歩くことすらままならないほどだ。
「この人ごみは凄いかも…けど、コレじゃ戻るのも一苦労かも…」
「………シャル…ル」
どう行動しようかと壁に持たれ考えていたシャルルにメノウのか細い声がかけられる。
「なに?」
「………………………お腹…減ら…ない…?」
「え?あー確かに…」
メノウにそう言われて道に設置された時計を見ると既に午後の九時を越えてしまっていた。
「そうだね…何か食べようか…ん?」
ちょうどその時左側からの屋台から何かを油で揚げる臭いが鼻についた。
屋台に書かれている文字を見るとどうやら魚の揚げ物らしい。
「あれでいいか…近いし」
シャルルの言葉に珍しくメノウが即座に頷いていた。よほど空腹だったらしい。苦笑しながらシャルルはメノウの手を引き屋台の前まで歩いていく。
「すみません──えっとこのフライ一つと…メノウちゃんは?」
「こっちの5つ」
「あいよ!!」
屋台の肥満気味の男は愛想のいい顔を向けすぐに魚の切り身を手早く揚げていく。
「あ、作り置きじゃないんだ」
「たりめぇだ。んな冷めたもん誰が買うんだい」
シャルルの言葉に笑いながら男はすぐに揚げたてのフライを紙に包んでいく。
「ほら、できたぜ」
「あ、はい」
フライが入った紙袋を受け取り一つ取り出し残りをメノウに渡す。
「嬢ちゃん達観光客?」
「うん───そんなところ──」
シャルルがを応えながらフライを頬張ろうと口を開けた瞬間────。シャルルの手からフライが消えていた。
「…あれ?」
横を見るとメノウがいつの間にかシャルルが持っていたフライを握っている。
「え?メノウちゃん───?」
メノウの行動にシャルルが問いかけるとメノウはそれを地面に叩きつける。
「───私達───毒入りのフライなんか頼んでいない」
メノウが叩きつけぐちゃぐちゃになったフライから出た匂いにシャルルが気づく。この鼻にくるアーモンド臭は────。
「こっこれ…青酸────!」
「伏せて!」