Atonoment Wings 3
□二章 狭間
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「さて…首尾はどうかね?」
「残念だけど麗しき姫君様は逃したよ」
薄暗い部屋で一人の男が窓に目を向けており背後からの人影の言葉を聞くと唇をほころばせる。
「逃した?逃してやったのでは?」
そこでようやく振り返り楽しそうに笑う。
「君の虫達がいれば彼女達の追跡など容易だったはずだが?」
「…いやはや、おみごと」
黒い礼服の言葉に悪戯を見つかった子どものように笑い青年は肩をすくめる。
「命令違反で処罰するかい?」
「まさかまさか」
茶目っ気たっぷりの言葉に男はおもしろそうに笑う。
「そもそも今回は私が立てた計画ではなく"彼女"だ。しかも私は前任務の失敗で迂闊には動けない」
「失敗?失敗だって」
男の自虐的な言葉に青年は笑う。
「あれは君の計画通りだろう?セジェスタに揺らぎをかけて用済みとなった騎士どもを向こうに始末させる。どうせ行方不明の黒騎士も君の手にかかったんだろ?」
青年の指摘にも男はゆるく笑うだけだ。
「ま、いいや。ところであのご婦人は何をしようとしてるのかな?」
「さてね…今回は私の出る幕はなさそうだ」
「…休み気なんかないだろう」
そこで青年は陰をこもった笑みを浮かべていた。
「今回…いや続きがあるんだろう?何をやる気なのさ?」
「…私は舞台に華を送るだけだ」
興味津々といった青年の口調に男は気軽に答えていた。