Atonoment Wings 3
□序章 闇の中で
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夜の空─────と言うと人はまず星や月という夜を照らしてくれる天体を思わせるだろう。
特にこの周辺────セジェスタと小規模ながらも自治を六都市同盟の国境の森は特に空気が澄んでおり夜空は満点の星が広がっていた。
六都市同盟もまだ貧困の差はあるがそれでもセジェスタに亡命するといった国政ではない。
だが、そんな森で場違いなほどの悲鳴が上がっていた。
「馬鹿!こんな乱戦で撃つな!!味方に当たる!」
森の少し開けた場所で絶叫が上がっていた。何人もの野戦服の人間が銃を構えているが銃口はどこに向けるべきなのか分からないのかさまよってしまっている。
既に彼等足元には同じ服装の死体が転がっている。どの死体も首に切り裂かれた傷がはしっている。
「畜生!どこにいやがる!出てこ……!!?」
どこにいるかすら分からない"敵"に一人の男が一喝した瞬間森に広がる闇から鋭い閃きが走った。
怒鳴り散らした男の喉には黒い短剣が突き刺さっていた。
「そこか!!」
倒れた男に飛来してきた方向に数人がそれぞれが拳銃を持ちあげ発砲を開始する。
「へへ…どうだ」
数十発の弾丸の驟雨をくらえば生きている人間などいない。
だが彼らの思惑は背後から接近してきた影により覆されることになった。
その"影"は一瞬で男の後ろに周り逆手に持った短剣で相手喉を切り裂いていた。
「……………!!」
「き、貴様!!」
切り裂かれた男が血を吹き出しながら倒れることによりようやく暗殺者に気づいた野戦服は自らも短剣で応戦しようと腰に手を伸ばすがその間に暗殺者は踊るように回転しながら既に懐に潜り込んでいる。
「な…!!!?」
既に刃は男の喉を断ち切っており続けて後ろから近寄っていた者を振り向きざまに顔面を断ち切る。
振り向いた暗殺者の背後には一瞬にして惨殺された二人の人間が血を吹きながら地面に落ちていく。
湿った落下音に野戦服達は恐怖の表情を隠せずに殺戮者から後退する。
恐怖に駆られたためなのか先程から全員が一言も喋ろうとはしなかった。