日和

□【1000hit&相互記念】ヤキイモ
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「ほら、いつまでも倒れてないで芋食べたらどうです?念願の“黄色いお芋”ですよ」
差し出された芋をジャージの袖越しに掴む。
何この子。その言い方。
「あっ、つぅっ!」
「熱いですよ気をつけてください」
「遅!」
お芋が転がる。やれやれとでも言いたげに妹子が見てる。
「妹子、熱い!拾って!」
「いやです」
妹子は自分の分を枝に刺したまま器用にアルミホイルを剥き始めた。
あぁもう忌々しい!
苛立ち紛れに妹子の剥いたお芋にかじりつく。
「あっ!」
「…あっつぅうぅぅ!!」
舌が拒絶して無理矢理飲み込む。
ジリジリ痛む舌と急に塊を飲み込むハメになった喉が詰まっちゃったせいで、私はもうパニックだ。
「ばっ、馬鹿ですかあんたは!」
慌てて妹子が水筒をくれる。
急いで水を流し込むが、既に私、涙目。
「妹子〜火傷した〜」
「全く、摂政の癖に馬鹿なんですから」
そうそう。私は摂政、妹子は五位。
涙ぐみながら私は考える。
私は皇子、妹子は地方豪族。

ふ〜。面倒だなぁ。
何がって、妹子が。
今度は火傷しないように気をつけて口に運ぶ。
やっぱり黄色いお芋の方が甘い。流石芋子の用意した芋!
その芋子も隣りではふはふやってる。
あ〜あ、共食いしちゃって。

「妹子、甘い?」
「甘い、です、ね」
はふはふいってる。ワンちゃんみたい。
「ねえ妹子、お芋を美味しく甘くすんのは、難しいんだぞ」
「芋は元々甘いもんでしょ」
「ちがうぞ芋子!生の芋かじった経験ないな?ゴリゴリだぞ?そりゃちょっとは甘いけど!お前自分のこと何にも解ってないなこの芋類!」
「僕は人類だって何回いわせんだ!」
そうだ、こいつは何にもわかってない。
なんか鳴門金時のクセに、ヤム芋ですイモ!みたいな。なんてアメリカン!
「もっと自分をよく知りなさい芋子」
「妹子だ!」
いや、ホントにヤム芋だと思い込んでんのかもしれない。
それこそ病む芋。
ヤム芋子気づけ、お前はでん粉大量に取るためのの塊じゃないぞ。
まぁ、そんなこんなで私はまだほっこりした黄色いお芋を口に運ぶ。
「焼き芋子に問う」
「焼けてません」
「じゃぁ妬き芋子」
「もう、何なんですか!ゆっくりお芋くらい食べさせてくださいよ」
大口を開けて芋にかぶりつく。
柔らかいそれは妹子の白い歯でぶっつり。

「お前、私に妬きすぎ」

んがっと妹子が変な声を上げた。
胸をどんどん叩いてる。

なんだろ、ママゴリラ?

「ウホウホソイヤ!」
私が掛け声をかけると妹子が鬼のような形相でこちらを睨む。
何か私悪いことしただろうか断じて否!だって私は偉いから。
必死で水筒に手を伸ばしてる妹子を見て漸く私は芋の塊を喉に詰まらせたんだとわかった。

危うく妹子が芋に食われるところだったみたいだ。
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