日和

□幸せの花束 Ver.good day
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『僕が、責任を』
『言われなくともそうするさ。コレは隋に行っていない事になっているからな』

やめて馬子さん

『小野妹子…皇帝、楊広よりの返書を持ち帰る事能わず、これを遣隋使の任、未遂として処罰を下す』

やめて、やめて

『小野妹子、これを大王の名を以て流罪に処す。冠位は取り下げるものとする』

妹子が馬子さんに深々と頭を下げた。
冠を解き、私の前に立つ。


『返上、申し上げます』

嫌だよ、妹子。どうして君が

『小野妹子…冠位五位、これを以て確かに…冠位を取り下げたものと認めます』

ああ何言っちゃってんの私。

ごめんね、妹子…


『馬子様、これほど軽い刑になるとは思ってませんでした…ありがとうございます』
『事情は太子から聞いている。全く、君のような有能な者より、よっぽどコレを流してしまいたいよ』
『…太子?』

私が、悪いのに。

なんで妹子が責任取るの?


『…わかってますよ、太子。甘くない事くらい。でもね』

茶色いくりくりした目がしっかりこっちを向いている。

『地方豪族からここまで成り上がった僕をナメないでください』

妹子がどれだけ頑張ってきたか。
全然知らないわけじゃない。

だから

『妹子ぉぉ』
『あぁもうそんな情けない顔しないでくださいよ!久々に…というかはじめてしっかり摂政やってんですから!』
『なっ…!おまっ、酷!隋でも国書ちゃんと書いただろがー!』
腹立つ!
なんなのこの子、今冠位百位より下の癖に!いや私のせいだけど!

『マイナス要素の方が遥かに多かったんで忘れてました』

ニヤニヤ笑う妹子。
ちくしょー毒妹子!毒々妹子!

『じゃ太子“休暇”存分に楽しませていただきますよ』
『絶対いいお土産持ってこいよ!』


私、頑張る。
頑張って妹子が帰って来られるように何とかするから。

だから、無事に帰って来い!

ひとしきりのやり取りの後、安心したように微笑むと妹子は馬子さんと私に頭を下げて部屋を出て行った。

『実にもったいない』
馬子さんが呟いた。
もったいないお化けだ。

『君が定めたんだろう太子。能力のある者だけを登用する。ただそれだけの単純な話じゃないか』


能力は十二分にあるけれど。

『早く呼び戻せるようにしたらいい。またその能力が発揮出来る機会を作ってやれ』

…うん、そうだね。




帰ってきたら、守ってあげればいい。
そしたら勝手にまた這い上がってくるかな。
くるよね、きっと。

私のせいだけど。

摂政だもん、私。




「竹中さん」
「ん?どうしたんだい太子」
「………仕事、行ってくるよ」
私は立ち上がる。

「太子」

振り返ると柔らかい笑み

「迷わないで、今できる事だけやっていればきっと良い方向に行くから」
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