日和

□拍手ログ
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眠っている顔を覗き込む。
起きている方が幼げだというのはある意味貴重だと思う。その言動故だろう。
元はいいのに、と妹子は思った。

どんな夢を見ているのだろうか。

眉間にはうっすらと皺が刻まれている。
ギリギリモチ肌だという少しカサつく肌は白い。
紅潮しやすいのは色白のせいだろう。
頬も鼻もすぐ赤くなる。だから幼く見えるのだ。
遊ぶ時に捲りあげた腕は細く、血管が青紫に浮いている。
血管の中には今も血が巡っている。

そう思うといたたまれない様な不思議な気持ちがふつふつと沸いてきた。

薄い肌の向こうで脈打つ血管。
その中を流れる瑪瑙色をしたそれは、脈々と受け継がれてきた王族の血。
すやすやと寝息を立てる彼の隣りに腰を下ろす。
そこここに浮いた筋を視線で辿る。

そして何気なく自分の手を日に翳した。
日焼けした掌が赤く透けて見える。
違うんだよなぁ、と再び視線を戻して呟く。
薄い唇。
薄く白い肌は透けるようにうっすらと赤色を帯びている。
皮膚越しに見る赤はひどく胸を掻き乱した。

それそのものは鉄臭いだけなのに。

この先、歴代の大王のように、彼の名も綺麗に飾られ並ぶのだろうか。
当の本人はまだ夢の中の住人。
もどかしさを言い訳にして、背をかがめる。

【博物館】

決して触れる事の叶わない高貴な赤瑪瑙に魅せられて、透明なガラスケース越しにそっと口付けた。
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