日和

□犬と私とそれからあなた
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調子丸がぐったりしていた。いつもの事だけど。
私は屈みこんで倒れた調子丸を覗き込む。
「調子丸、今日はどこの調子が悪いんだ?」
「あ、アワビ太子ちょうどいい所に…うぅ、罵倒の調子が…」
「タイミングの調子も悪っ!!なんかムカつく気も起きないよ!」
「記憶の調子が悪くてこの書類をお届けするのを忘れてたので…馬子様から…」
「お仕置されたの!?うわぁぁああぁ!!」
私は立ち上がる。

「いいなぁぁあぁぁああ!!!」

私なんて絶対お仕置がアイスの棒でお尻ぶたれるのに!
おーよしよし私のプリティーでセクシーなお尻…
そうなんだよ、私も馬子さんにちゅーされたい!!
なんで!?なんでなの!!??
ピクリとも動かなくなった調子丸が多少気になったものの私は馬子さんの所に駆け出した。

「馬子さぁああぁん」

ばぁん、と派手な音を立てて馬子さんの部屋に滑り込む。
轟音と共に床に並んでいた紙の束が舞い上がって
「おァマぁっ!!!」
私の上に降り注ぐ。
ぎゃぁぁあ!!

紙の海から浮かび上がると、部屋はギャランドゥ…じゃないガランドウ。
なんてこったい。
「馬子さーん!馬子さーん!!」
呼んでも返事なし。
グヌゥ…ここまで摂政を凹ませるとはなんたる手練!

「うまうまうーまこさんうーまこさ…へぶし!」
「うるさい」
寝そべったまま書類の上をぐるぐる回っていたら後頭部に痛み。

………踏まれてる。私踏まれてる。

「馬子さん!!」
跳ね起きると馬子さんがよろけた。
そのまま抱き付けば二人して倒れこむ。
また書類が吹っ飛ぶ。知ったこっちゃない。
「…………」
「わぁい馬子さんだ馬子さんだ!」
「太子…この書類をどうするつもりだ?」
「ん?何とかなりますって、あはははは!」
「君が何とかしたまえ」
「ん〜」
逃げない馬子さんに気を良くして私は生返事で返す。
はいはい何とかしますお安い御用。だからかわりに甘えさせて。

その水分の少ない首筋を鼻で撫でる。

「君は発情期の犬か?一体いくつになったんだ」
「えっと、今年で」
「32だな」
「聞いといて答えないでくださいよ」
「年齢を鑑みて少しは行動を慎め。それと臭いから離れてくれ」
渋々離れる。
なんだよなんだよ。
私は今日はとっても馬子さんに甘えたい気分なのに!
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