日和
□【1000hit&相互記念】ヤキイモ
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「な、ナニをいきなり」
「いや、妹子私に妬いてるなぁって思って」
漸く落ち着いた妹子に私はずいっと寄ってみる。
掌底でつっぱなされたけど。
そうなんだよ。結構、ね。
病む芋になってたから、お芋食べようって提案したんだよ。気分転換に。
まぁ気付いてないだろうけどさ。
私の仕事見て、眉間の皺、どんだけ深くなってたと思ってんの。
まぁ、私、スーパーイケメン摂政だから?仕方ないんだけどね。
仕事しろしろってうるさいくせに。
仕事したらしたで、劣等感に打ちひしがれちゃって。
こちとら年齢一桁の時から登朝してんだぜ。年季が違うんだい。
だのに私との間に遊ぶ時まで壁作り始めちゃって。
じゃぁ、いつ妹子は本気で笑って本気で怒って、本気で泣くことができるんだろう。
お仕事中はいっつも難しい顔して、それなのに遊んでてもダメだ、なんて。
「もっと甘くなぁれ、妹子」
二本目をぽくんと割る。
ほこほこした黄色い身が湯気を立ててる。
片割れを差し出すと妹子は怪訝そうにまた眉を寄せた。
「もっと芋としての自覚をもちんしゃい妹子」
何か言いたそうな妹子の口に芋を押し付けると「熱っつ!」と叫んで唇を押えて仰け反る。
「低音でじわじわじっくり焼かないとお芋ってあむわぁ〜くならないんだぞ、知ってるか?」
「し、知りませんよそんなこと」
「知らないのか、芋の癖に。ゴリゴリの生芋子だなお前」
妹子は何かをいおうとして、一旦やめて口の中でモゴモゴ言った後
「味なんて、食われてなくなるまでわかんないじゃないですか」
私は芋にかじりつく。
「だ〜か〜ら〜教えてあげてんじゃないか物分り悪いな、このお芋は!芋の事を知れ、手間をかけて焦るな、甘くなれ!はい、美味しい焼き芋できあがり。元々甘くなれるんだからさ、どうせなら美味しく食べたらいんじゃない?」
妹子は、口を引き結んだ。
さっき芋押し付けたところが赤くなってる、唇。
ヒリヒリしてるだろうから触ってやろうと指を伸ばしたら
「ちょ、まだ私触ってないぞ!何これ摂政念力!?」
妹子の目からボロボロと涙が落ち始めた。
そ、そんなに痛かった、のか?
「すいません…」
「ななな、何が!?」
ぐしぐしと涙を拭うと、何事もなかったように焼き芋にかじりついて呟いた。
「美味しいです」
なんだか、よく分からんけど、ヤム芋はやっと自分がサツマイモだって気付いたみたいだった。
「な」
私も何だか嬉しくなってかぶりついた。熱い、でも、甘くて、ほこほこしてる。
寒いからこそ、この甘さが愛おしい。
「っていうか、いつの間に僕のマフラーまで!返せ、臭くなる!!」
「ぎゃーー!遅ッ」
fin