日和

□【100hit】赤く彩る
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芭蕉さんはポンと手を打った。

「曽良君が鬼だったら良いんだ…ホババァッ!!!!」
「失礼な事は口にしないほうが良いんですよ、芭蕉さん」
「やっぱり鬼!鬼弟子!!鬼畜眼鏡!!」

キイキイ言いながら芭蕉さんが腕を振り回しているが一切無視をする。


「一瞬でも曽良君が鬼なら連れていかれてもいいやなんて思っちゃった松尾がバカだったよ!松尾大後悔むしろ大航海!ボン・ヴォヤージュ松尾略してボン尾!!」



…………………。
僕が、鬼、ならば




「そうですか、ならば連れて行かせていただきますよ」


だから、迷子になんてならないんです、あなたは。

遠い所なんかにやってたまるか

それならば、僕が。


思わず口許が緩むところだった。



「曽良君…?」
「くだらないことでグダグダ言うので不快です。いっそ何も考えられないように連れて行きますよ」
「ヒヒィン!殺される!松尾殺される!」


芭蕉さんは頭を抱えて蹲る。
全く……。

「とにかく、日が暮れる前に宿を探しますよ。そんなところで居座らないでください」

手を差し延べる。
べそべそしながら芭蕉さんは僕の手を握った。

そのまま引き上げて

引き寄せた。


「う…?え…?」


芭蕉さんが唇を触って、その後一気に真っ赤になる。



紅葉にも奪えない『ぬくもり』とやらですよ。


ねぇ、芭蕉さん。



あなたは、ちゃんとここにいます。



「そそそ曽良君、も、もう一回…」
「はい」
「ホババァッ!違う!断罪チョップじゃなくて!」
「他に何があるんですか。グズグズしてると放置しますよ」
「放置せんといて!連れて行って!」



今、あなたがいることを
今、僕がいることを


迷子になるなら、僕がむかえにいけるよう



(赤く彩る)


「紅葉、綺麗ですね」
「うん。あ〜なんかいい句浮かびそう…『紅葉饅頭に チーズは 邪道だ 芭蕉』どうかな!」
「この、ヘタ男が!」
「ヒヒィン!鬼弟子!!」







fin
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