日和

□へびのしっぽとあたまのはなし
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「たいしぃ、眼が死んでるよぉ」

ニヤニヤ笑う閻魔。
口元は笑みの形に歪んでるのに

「そういう閻魔こそ、ギラギラしちゃってまぁ…眼が逝っちゃってるじゃぁない」
ほとんど何も感じない。
全身が痺れているようで、しかしそれは溜めにためた情が麻痺しているようでもあった。
どろりとして生温かい身体は、今の精神には重すぎる。
とにかく、寒い。
溶けたように不確かな身体を引きずりながらここまできた。
そしたら、転がされた。
転がされて、もう、立ってるのも嫌んなってた私は、そのまま地面と仲良しこよし。
胸の上に、どっかりと閻魔が跨っていて
「あ、は、は、ははは、はははは!!ははっ!!は、はは!!」
大きな目を、溢れんばかりに見開いて、さも嬉しそうに笑う。
嗤う…?

うん、その笑い声に意味も感情もないけれど。

私も、意味も感情もない視線を閻魔に向けていた。まるで寝惚けているみたいに。

寒くて寒くて仕方ない。
なんでもいいから、暖かくなりたい。
温もりを求めて、噛みつくような口付をした。


逃げはしないのを知っているのに、私は閻魔の首に、首輪をつける。
逃げはしないのを知っているのに、閻魔は私の手首に手錠をかける。


けらけら笑い続ける閻魔を、抱きしめてやることもできない。
仕方ないので首輪についた鎖を歯で噛み締めて思い切り引く。
食い込む革が、私の抱擁。
舌を唇から零し、おかしな音で呼吸をしながら、恍惚として閻魔は微笑んだ。
閻魔の細い指先が、私の胸に凶悪なまでに爪を立てる。

「すき」
「すき」
「あいしてる」
「あいしてる」
「妹子」
「鬼男君」



((嗚呼、なんて弱虫))


壊したい愛しさを互いにぶつけて
壊れそうな体を抱きしめあって

壊れている精神を舐めあって

「首を絞めると気持ちいいよな」
「うん、わかるなぁ」
「同じだ」
「そう、同じ。食べたものなんていらない、っておもったり」
「胃液に、血が混じるまで」
「爪が溶けるまで」
「内臓まで気持ちで満たして」
「全部満たして」
「気持ちいいから」
「噛みついて」
「爪を立てて」
「切り刻んで」
「抱き潰して」
「何もわからなくなるくらい」
「何も考えられなくなるくらい」

さも愛しげに、閻魔が笑う。
さも愛しげに、微笑みかえす。

「弱虫だ」
「ホント、弱虫だね」


互いの『一番』に、求めることをためらうほど


「気が違ってしまいそう」
「何を今更」

「愛しているよ「妹子」「鬼男君」


壊してしまいたいくらいに



「ねえ太子」
「ねえ閻魔」

「「壊れて見せてよ」」



愛しい人の、かわりにさ。

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