astray


□幸せ味のオムライス〜桜side〜
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2年前の夏。 
評判の悪いホストクラブに、毛色の違う子猫が働いていて、かなり危なことまでやらされていると同業者から聞き、様子を窺いに店に行った。人目で、それが誰なのか解った。明らかに限界を超えた表情で客ひきをする小さなホストは、まだあどけなさを残す少年だった。
 すぐにお金を積んで引き抜き、astrayで雇った。
元来の明るさを取り戻した竜胆は、すぐに店に馴染み、毎日楽しそうに働いていた。
そうして1ヶ月が経ったころ、竜胆が店にユウを連れてきた。
 人と目を合わせて話ができないユウは、小動物のようで、世話焼きのサクラはユウを構わずにはいられなかった。
 頻繁には来ないけれど、気が付くとカウンターの隅で申し訳なさそうに小さくなって座っていたりする。
 人の中で生きることに不器用なユウは、なんだか奏に似ているので、放っておけない。
 自分でも意識しないうちに、ユウが店にくることを心待ちにしていた。
ユウが来そうな日はなんとなく解って、無意識にカウンターの端っこを空けておいたり、ユウの好きなケーキを用意しておいたり、カウンターの端にユウの姿があると頬がだらしなく緩んでしまったり。
それに、ユウを見ていると懐かしい気持ちになる。
青くて苦しかった恋心を思い出す。
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