astray


□幸せ味のオムライス〜ユウside〜
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自分に自信が無くて、人と関わるのが苦手なユウ。
アメリカ人の祖父の遺伝子を濃く受け継いだ為に、日本人離れした赤毛と白い肌を理由に、小さな頃から冷やかされることが多かった。
物をはっきりと言うのは性に合わず、関西人のクセに気が弱いとからかわれることも苦痛だった。
中学1年の春。やっと大阪から離れられ、けれど知らない人間しかいない土地で、ユウの人見知りは増すばかりだった。転校して1週間が経っても、クラスメイトと一言も口をきくことができなかった。

『関西人のくせになんで面白いこと言えないんだよ?』

そう言われるのが怖かった。
そんなある日、食あたりで入院していた竜胆が復学し、同じ小学校出身者が多かったせいか、転校生のユウよりもクラスに馴染んでしまう。
明るくて、誰にでも好かれていて。そんな、いつもそうなりたいと思っていた要素を全て持った竜胆を、ユウは憧れの眼差しで見つめていることしかできなかった。
ところが竜胆は、ひっそりと憧れることを許さず、転校生のユウが珍しいのでここぞとばかりに質問攻めにした。
意表をつかれ、つい返事をしてしまったユウ。
竜胆は、『関西弁ってカッコいいな!俺、お前の喋り方好き!』と言い、その日を境にユウにべったりくっついて歩くようになった。
はじめて、自分が認められた気がした。はじめて、人に心を開いた。
今でも、標準語は使わずにいる。
そんなことがあって、ずっと竜胆の傍にばかりいた。
竜胆が、高校に入ってからバンドに興味をもちはじめたので、必然的にユウもその道へ。
 接客を好む竜胆と違って、人と関わる仕事が出来ないため、高校を卒業したら一緒にはいられない。だから、せめてバンドという繋がりを失くさないように、必死にギターを練習してきた。たとえ人前に出ることが死ぬ程怖くても、竜胆と一緒ならば頑張れる。
 竜胆が高校を卒業してすぐに働いたホストクラブは評判も悪く、心配はしていても怖くて行けなかった。
けれど、ある人に助けられてその人の店で働くことになったと嬉しそうに言う竜胆。強引にastrayに連れて行かれた。

『俺の命の恩人!』

 そう言って紹介されたオーナーの桜は、とても大きな体の男の人で、エキセントリックな容姿で、すぐにでも逃げ出したくなった。けれど、見た目と違って桜は情に厚く、安心感を与えてくれた。
 目を見て話しができないのも気にせずに、桜は明るく接してくれた。
竜胆や、竜胆の家族意外の人間に、無条件で受け入れられたことなんてなかったユウ。
 その日から、仕事で叱られたり、嫌味を言われて心が折れてしまったときは、桜の顔を見に行くようになった。
 自分のことは上手く話せないけれど、桜の話はとても面白いし、コロコロと変わる表情に思わず自分も微笑んでいたり、桜が忙しくカウンターで仕事をしている姿を見ているだけで元気になれた。
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