astray
□ガテン小僧☆育児ノイローゼ
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―5日前。終業式―
「サクラちゃん!!たっだいまあ!!!」
まだ開店には早すぎる時間。控え室でマンガを読んでいた桜は、騒々しく帰宅を告げた碧を抱き上げる。
「お帰りなさい。今日も学校楽しかった?」
「うん!今日はね、えっと、あしたから冬休みですよってお式があったよ!!
だから、あしたから冬休みなの!!」
「そう・・・あら、ミー君。お道具箱持って帰って来ちゃったの?」
ランドセルの中から緑色の箱が見えたので、桜は不思議に思った。
「うん。冬休みだからね!!」
お道具箱を持って帰るのは、夏休みと春休みなんじゃ?と思ったが、本人が楽しそうなので、深く追求はしないことにした。
「ほかにも、上ばきとか、冬休みの宿題とか、あと図工で作った工作!!」
「あらあら、そんなに。重くなかった?サクラちゃんに言ってくれたら、お迎えに行ったのに。」
明らかな大荷物を、この小さな体が運んでいるのを想像して、居たたまれなくなった。
「大丈夫だよ!ぼくは男の子だからね!!
あ、それに、カナちゃんに神社の坂んとこであって、持ってもらっちゃったし!」
素直に迎えに来た、と言えない奏は、なんで少しずつ持って帰って来なかった、と文句を言いながら荷物持ちをしたのだった。
「愛だわねぇ。」
普段は、自分から何かをするような人間でない奏をよく知る桜は、文句を言いながらも、ミー君と並んで歩く姿を想像して、微笑んだ。
「それで、カナは?」
「うん。カナちゃん、今日からイタリアに行くって!
ぼく、今日からおるすばんなんだよ!!」
「イタリア!?聞いてないわよ!?」
奏は、何を考えているか解らない所があって、何日も留守にすることも頻繁にあった。碧を拾ったベガスの時もそうだった。
けれど、それ以降、放浪癖は治まったと安心していたのだが。
「まったく。一体何でまたイタリアに・・・」
帰ってきたら、どんなお仕置きをしてやろうか、と考えていると、テーブルの上の携帯が振動をはじめた。
「あらやだ。カナからだわ。」
『件名:空港より
イタリア。
ワイン。
帰国未定。
プリンよろしく。』
「プリンって何よ?
本当、カナには困ったものだわ。」
単語のみで、知らせる気があるのか無いのか解らない暗号文に、桜は呆れてため息をついた。