astray
□とある日曜日
1ページ/2ページ
朝の6時。
寝坊は体によくない、と、力也はいつもと同じ時間に目を覚ました。
「タバコ、タバコ・・・」
眠気覚ましに一服しようと、サイドテーブルに手を伸ばす。
「・・・ん?」
右腕の動きを邪魔する重みに、布団を捲ってみる。
黄色い頭の外人が、長い睫毛を閉じて眠っている。
碧だ。
碧は、このビルのカギを持っているので、気軽に力也の部屋に入って来られるのだ。
「・・・。」
さして珍しいことでも無いので、あえて放っておくことにする。
タバコに火を点けて吸い込むと、空気が少し冷たい。
もう冬も本場だなあ、とボンヤリ考える。
「あ、ミヨシさんからメールだ・・・」
なんとなしに開いた携帯には、深見からのメール。
どうやら、力也が寝入ってから送られてきたようだ。
『件名:やっほー('∀'●)
トランクス派?
ブリーフ派?
まさか、紐?(≧▼≦)
』
「うわっ、またしょーもないメール。」
定期的に送られてくる、セクハラまがいのメール。口では性もない、と言いながらも、顔がニヤけてしまう。
「・・・幸せそうだね・・・」
「うわっ!?」
思わずタバコを落としそうになってしまった。
薄闇の中で、奏がボーっと座っている。体育座りで。
「・・・おはよ・・・」
驚く力也に向かって、小さく手を振る。
「・・・びっくりしたぁ、何してんすか!?」
携帯を見ながらニヤける様は、さぞかし不気味だっただろう。焦って携帯をポケットに入れて、なんでもないフリをする。
「・・・お迎え・・・」
ベッドに眠る碧を指差す。
「ああ、ミドリの迎え?
てか、勝手に入ってくんのはいいんすけど、もうちょい喧しく入ってきてくれません?ビビるんで。」
「・・・」
聞いているのか判断しづらい無表情。きっと、聞こえていても、奏は改善しようとはしないだろう。
「あー、まだ早いんで、コーヒー飲んできません?缶ですけど。」
沈黙に耐えられず、お茶に誘ってみる。
「・・・そうする・・・」
意外にもあっさり了承して、椅子に腰掛ける。
飲み物くらいしか入っていない冷蔵庫から缶コーヒーを2つ取り出して、テーブルに置く。
「カナデさん、寝てないんじゃないすか?」
10時までの力也と違って、奏は閉店まで店に出ている筈。2時ちょうどに眠ったとしても、睡眠時間が短かすぎる。
「・・・3時間以上眠ってらんない・・・」
「短っ!」
6時間以上はとらないと駄目な力也は、半分しか眠らない奏を不思議に思った。 けれど、少し納得した。きっと、いつもテンションが低いのは、眠いからなのだ。
だったら、もうちょっと眠ればいいのに、と突っ込みたくなった。
「あ、そいえばさ、なんでアイツ、ミドリって名前なんすか?」
またもや間が持ちそうにないので、疑問に思っていたことを聞いてみる。