astray


□夜明け前のホストたち
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 午前4時30分ごろ。
力也の失敗談に花を咲かせていたのもほんの少しの時間。新作の完成を知らせる桜もまだ、一向に現れる気配もない。 流石にぐったりとしだしたホストたち。
 亮はソファに横になって寝ているし、隣の幸太郎は閉じる瞼と必死に戦っているし、ノリタケと学はまた読書をはじめてしまった。竜胆は、誰にもかまってもらえないことが不服で、別段やりたくもないゲームを、つまらなそうにプレイしている。

「てかさ、アイツってさ、シズカちゃん追っかけて来たんじゃん?
もう付き合っちゃってんだし、なんでまだホストやってんだろ?」

誰かが返答をくれないことは解っていても、じっと黙っていられない竜胆がぼんやりと呟く。もちろん、誰も返事はしない。
 それでも、どうにかして気を惹こうと、ゲームを放り投げて続ける。

「だってさぁ、可笑しくね?アイツ、金が欲しいって訳でも無いし、接客だって好きくねぇじゃん?ぜってぇ可笑しいって。そう思わねぇ?」

「ん〜・・・リキは働き者でおりこうさんだからなぁ〜。」

睡魔と闘いながらも、律儀に返事をする幸太郎。けれど、その発言はいまいち的を射ていない。 寝ぼけていても力也を誉める言葉が出てくることが気に食わなくて、竜胆はムッとして唇を尖らせる。

「でもアイツってさぁ、なんか・・・地味じゃね?華ってヤツが無いんだよ。うん。
それに、ホラ、アレだ。ダメオヤジのシズカちゃんの恋人だし?」

今思いつく力也の欠点を挙げて、どうにか自分の株を上げようと測っているものの、その行動事態が余計に株を下げることになっていることに、竜胆が気づく筈もない。

「年下のクセに生意気にもオレよか背ぇ高ぇし?血の気多いし?襟足刈上げてるし?」

早くもネタが尽きたのか、言っていることが単なる悪口になってきている。

「オレのが先輩なのにケーゴ使わねぇし。昨日なんか、先輩のオレに向かって『店の冷蔵庫を勝手にアサんな!』とか生意気に説教垂れるし!」

言い終えて、やっと満足した竜胆は、同意を求めようと顔を上げる。
居眠りしていた幸太郎も、完全に寝入っていた亮も、雑誌を読んでいた学もノリタケも、一様に竜胆の方をじっと見ている。
 意外な反応に、竜胆は嬉しくなって、調子に乗って続ける。

「冷蔵庫ってのはそもそも、腹が減ったときにアサる為のもんだろ?
つか、むしろ、腹減りの先輩に『何かお作りしましょうか?』とか言ってみろってんだよ。」

ふんぞり返って熱弁する竜胆に、亮を除いた3人が顔を引きつらせて首を横に振る。
なんでだよ?と言おうとした竜胆の頭が、大きな手に掴まれる。
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