キリエル
□Trick or treat
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まずは、目の前の状況を把握しよう。
目の前には……カボチャがある。
状況説明、以上。
「って、キリさん何してるんですか?」
「見て分かんない?ハロウィンだよ」
カボチャの中からキリさんの返事が聞こえる。いや、それは分かるんですけどね……
「なんでまたキリさんがカボチャ被って……ていうか、どこから持ってきたんですか?」
「スイが持ってきたんだよ。『ハロウィンならコレだろ!』とか言って」
「はぁ……」
「あと、『カボチャ』じゃなくて『ジャックランタン』な」
「はぁ……」
なんていうか、意外だった。キリさんはこんなイベントにはあまり興味が無いと思ってた……
「なに?あんたはこういうの嫌いだった?」
「あ……いえ、そういうわけじゃないんですが……キリさんこそ、こういうイベントはあまり好きじゃないんじゃないかな、って」
まぁ私の勝手な思い込みなんですけど、と苦笑いして付け加える。
「んー……まぁ確かに、そんな積極的にはやらないかな」
「え……じゃあ、なんでまた今日は?」
いつもはやらないなら、なぜ今日はやるのか。
そんな私の疑問にキリさんは答える。たぶん、顔は笑っているだろう。
「だってさ、ハロウィンだぞ?」
「……?はい、」
「あんた、お菓子持ってるの?」
「いえ、持ってな………あれ?」
『トリックオアトリート』……ハロウィンにおいて、もはやルールとも言える決まり文句。
意味は―――
「『お菓子をくれなきゃ、悪戯するぞ』」
「え……えっと……?」
「お菓子持ってないなら……悪戯、するしかないよなぁ?」
キリさんがニヤニヤと笑っている。いや、カボチャを被っているから表情は見えないけど、確信できる。
「き、キリさん…悪戯って、いったい何するんですか……?」
「んー?」
言いながらじりじりと近づいてくるキリさん。手を繋いでいるからただでさえ近いのに、それでも近づいてくる。
そして、一言。
「じゃあ、まずは一緒にコレ被ろっか」
「へ?……わぷっ!」
一瞬キリさんの顔が見えたと思うと、次の瞬間には視界が暗くなっていた。
しかも暗くなっただけじゃなくて、文字通り目と鼻の先にキリさんの顔が。
「ちょ…!キリさん、近……!」
「なぁ、」
「え……?」
キリさんに呼ばれて、反射的に前を向く。すると、
―――唇に、柔らかい感触が―――
「ん―――!?」
しばらくの間、それは続いた。そうして息が苦しくなってきた頃、ようやくその感触が離れた。
「ぷはっ……」
「……ごちそーさま」
顔をあげると、やはりニヤニヤしたキリさんの笑顔が。
なんだかそんな顔をされるのが悔しくて、キッと睨み返す。……涙目になっちゃってるせいで、たいしたことはなさそうだけど。
……と思ってたら、
「じゃ、行くか」
と、私の手を引いて歩き始める。
「え、行くってどこに…?」
「どこって…布団」
「…な、何しに行くんですか……?」
そんな私の疑問に答えるかのように、キリさんは笑いながら一言。
「お菓子くれなかった分の悪戯、しっかりさせてもらうからな」
その後に何があったかは―――ご想像にお任せします。
――――――――――――キリは最初からコレが目当てだった、ってことで(^^)何があったかはご想像にお任せします(´・ω・`)