小説

□BANANA
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ピンポーン♪


「おーいツナ、近所のばあちゃんにバナナ貰ったんだ。


一緒に食おうぜ」


「あ、山本。いらっしゃい」


お茶を入れるから先に部屋に上がるようにと山本を促し、ツナはキッチンへと消えていく。


山本がしばらく部屋で待っていると、よたよたと頼りない足音が近づき、ドアの前で止まった。


「山本〜、ドア開けてくれない?」


「おぅ、いいぜ」


開けたドアの前にはツナ。


両手にコップを持っている。


「はは、危なっかしいなぁ。大丈夫だったか?」


「うん、大丈夫。こぼさなかったよ」


「そっかそっか」


よくやったとばかりに、ツナの頭をくしゃくしゃ撫で回す。


「わわっ!山元っ、お茶こぼれるってっ」


「はは、悪りぃ。ほい、バナナ。でかくてうまそう、だろ?」


ツナの手からコップを受け取ると、代わりにバナナを手渡す。


「ほんとだ。ありがとう」


にっこりと嬉しそうにバナナを受け取るツナ。


床に座り込むと、早速皮を剥き美味しそうにほおばる。


言葉に含めた意味に何も気づいていないその姿に、こっそりと笑みを浮かべる山本。


(俺が言わなきゃ一生気づかないんだろうな〜)


ただ純粋な気持ちだけで、貰ったバナナを手土産に選んだわけではないのだ。


そう、バナナをほおばるツナの姿が見たくて、持ってきたのだ。







「どしたの?山本は食べないの?」


パッと見さわやかな笑みで、ツナのバナナを食べている姿を眺めている山本に、


不審がって声をかけるツナ。


「ん?ツナのバナナ食ってる姿ってエロいよな〜と思って見てた」


「!?っ何言ってんだよ!?」


むせるツナに茶を渡す。


「だってそれ、大きさとか反りとか、ナニカに似てない?」


「ナニカ…?」


考え込むツナの姿に笑みを禁じえない。


「わかんないよ〜?何?」


「ほら、ツナにも付いてるコ・レ…」


耳元で囁きながら、ツナの股間に触れる。


「!? どこ触ってんだよっ!?」


真っ赤になったツナが、ポカポカと山本を殴る。


「はは、悪りぃ悪りぃ」


邪気なく笑いながら、両手を挙げて降参のポーズをとる。


「もう、山本ってば!」


山本がツナに過剰気味なスキンシップをするのはいつものことなので、


ツナも深くは考えずにいつもの悪ふざけだと取っていた。


けれど、山本の真意はただの悪ふざけではない。


少しでも深くツナに触れたいが為に、さりげなさを装ってツナへのスキンシップを


少しずつ深めてきたのだ。


今日の行為にもツナは怯えや、さほど不審な様子は見せなかった。


(この調子なら、冗談ぽくするキスくらいなら怒られないかな)


今後のツナへのスキンシップ計画を更に進められる気配に、ニヤリとほくそ笑むのだった。

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