色々夢

□紅天女
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目を開けるとそこには、いつもの万事屋の朝の光景があった。
気付いた新八がお茶を片手に銀時を覗き込む。

「あっ、やっと起きましたね銀さん! 早く顔洗って着替えて下さいよ、いつまでそこでぼーっとしてる気ですか」
「ああ…」

目があった途端お前は俺の母ちゃんかと言いたくなる台詞を連ねる新八。
だが寝起きの銀時にそのツッコミを入れる元気はなかった。目をこすりつつ立ち上がると、洗面所から頭を爆発させたままの神楽が出てきた。

「…あのさ、神楽ちゃん、洗面所にいたのにどこも洗面されてない気がするんだけど」
「駄眼鏡壊れてるアル」
「壊れてねェよ! 眼鏡のせいにすんなァァ!」

お決まりのやりとりを背に銀時は顔を洗う。
ソファまで起きて来たのは覚えていたが、そこでまた二度寝したらしい。

おかげで妙な夢を見た気がする。しかしもう内容は覚えていなかった。

なんだったかな、と軽く首を傾げながら自室に戻る。途中、新八が神楽に海老固めを決められていたが面倒なのでスルーした。

いつも通り着替えると、当番ではないのに新八が用意してくれた朝食が並べられていた。

「いただきまーす」

銀時と神楽は黙々と食べ始め、新八はお茶をすする。

「あ、そういえば知ってますか銀さん。外国でこの前クーデターがあったらしいですよ。ド派手な」
「クーデター?」

興味沸かねぇな、と半眼のまま銀時は味噌汁をすする。が、新八はやや興奮気味に続けた。

「何でも、侍がいたらしいんです。刀を持った」
「へぇ…」

一瞬ドキッとしたが、国内ならともかく海外とあらば、流石に高杉だって関わっちゃいないだろう。銀時は自分に言い聞かせた。

「ネットで噂になってたんですけど、なんとか天女って言う…異名を持つ侍だって」
「店長? ずいぶん偉そうな名前アルな」
「いや違う違う、天女だってば」

神楽の聞き間違いを直している間に、食べ終えた銀時は食器を片付ける。

「…ごちそうさん。ちょっと出掛けてくらぁ」
「え? どこに行くんですか?」
「野暮用だ野暮用。夜には戻る」
「ちょっと銀さん!? 仕事はどうするんですかー!」
「大丈夫だよ新八くん。神楽ちゃんもいるし君たち二人で何とかなるさ」
「なんかその言い方腹立つんですけど! あっ…」

新八が慌てて追いかけるが、銀時は既に靴を履き終えていた。
原付のキーを持ち、ヘルメットを被る。新八が何か言っていたが、銀時は手だけ振ると、無言のまま玄関を出ていった。
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