色々夢

□小話(秋水)
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小話9-2

顔をひきつらせつつ、夏侯惇はひとまず呼び掛けてみる事にした。

「楊采…」
「……」
「おい…」
「……」

察するのが下手な彼にはこれ以上ない苦手な空気である。じっとりとした視線に暫く耐えていたが、ついに椅子から腰を浮かせた。
しかし今までのように逃げる為ではなかったその行動は、完全に楊采の虚をついた。
片手で彼女の顎を捉えることに成功し、そのままの勢いで口付ける。

「ん…!?」

何かが落ちた音が響く。きっと楊采が手に持っていた書簡を落とした音だろう。
ゆっくりと離れると、目を潤ませ耳まで真っ赤にした楊采が固まっていた。
机を回り込んで隣にやって来てもそうしていたので、よほど驚いたらしい。うまく言えないが、彼女から怒りは飛んでいった気がするのでこの行動は間違いではなかったのだろう。

「…お前が待っていると思えば残りの仕事も苦ではない。ここは良いから、代わりにどこか行きたいところを考えておいてくれ。俺は…あまりそういうのは詳しくないからな」
「……」

語りかけつつ抱き上げたら、静かな頷きが返ってきた。
ずるい、というとても小さな呟きが聞こえてきた気がしたが、意味がよく分からなかったので、とりあえず、顔を覆って動かなくなった彼女を寝台へ運ぶことにした。









20171026
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
なんか…すいませっ…二人をイチャイチャさせてやりたかったんですけど…やっぱりうまくいかない…!

夏侯惇としては楊采には休んでもらいたいし任されてた仕事くらい一人で片付けたい的なプライドがあるのです。

対して楊采はせっかく帰ってきたし二人でさくっと仕事終わらせて後はのんびりしようかな、という言い訳をしつつ、本音はただ一緒に居たかっただけなのです(あと、からかって遊びたかった)。

おそらく他の人に同じことをされても顔色変えずにあしらえるのですが、相手が夏侯惇だと耐えられないずるい…となって撃沈しちゃう意外と女の子な一面がある楊采だったら可愛いな、と。
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