色々夢

□ユメノナイニチジョウ
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【一ノ瀬トキヤ生誕祭2016】
※途中、曲や人に対する感想等が入りますが私の個人的な見解ですのでさらっと流していただけると幸いです。







「お疲れさまでした」

スタッフに挨拶をして、楽屋に戻る。今日の仕事はもう無い。ゆっくり家に帰り、明日の準備をするだけだ。
久し振りに本屋に寄るのも良いだろう。最近は忙しさから寄ることが出来ず、話題の本などは取り寄せたりしていたが、やはり本屋で実際に手に取りながら選ぶとより楽しみが増える。

そうと決まれば、とトキヤは手際よく荷物を纏め、楽屋を出ようとドアノブに手をかけた。

ガチャ!

「トキヤ! まだいるー?」

急に開いたドアに衝突しそうになって、トキヤは咄嗟に飛び退いた。
大袈裟ではない。それくらいしなければ、ノックもせずにドアを開けたこの人物は、そのまま中に飛び込んでくるのでどのみちぶつかってしまうところだったのだ。

「音也! ノックしなさいと何度言えば──」
「あ、ゴメンゴメン、トキヤが帰っちゃってたらどうしようって急いでたからさ!」

こちらは怒っているのに悪びれた様子など微塵もない音也。
だからと言って彼を無視して帰るほどの事でもないのが残念でならない。トキヤは自分の甘さを恨めしく思った。

「なんですかそんなに急いで。用があるなら、電話なりメールなりすれは良かったでしょう」

ため息一つで気持ちを切り替え、バッグを肩にかけ直す。

「えへへ、そうだったね。ねぇ、トキヤ今日はもう仕事無いよね?」
「ええ、まあ」
「じゃあさ、ちょっと一緒に行って欲しい所があって…」
「どこですか?」

とたずねた瞬間、トキヤの肩から彼のバッグが消えていた。気づいたときには音也が抱えて走り出している。

「トキヤー! こっちこっち!」
「ちょ、音也…さっきから何なんですか!!」

早くー、などと呑気な声で急かされ走らされ、これで怒るなと言うのは無理がある。しかし音也が自身のポテンシャルを遺憾なく発揮してくれている為、正直追いかけるので精一杯である。

「はぁ…はぁ…!」
「あー!良い汗かいたねー!トキヤ、着いたよ!」
「こ、ここは…?」
「とにかく入ろう!」

背中を押され、エレベーターに押し込まれ、そして降ろされる。いくつも同じようなドアが並ぶそのフロアを歩く頃には、さすがのトキヤもこの場所が何なのかはわかっていた。

「音也…なぜカラオケになど…」
「まあいいじゃん、この部屋だよ!」

音也がドアを開けた瞬間、部屋の中に見知った顔がたくさんあるのが見えた。
そして、何かを構えた彼らが一斉にそれを放つ。

「誕生日おめでとうー!!」

ひらひらと舞う紙吹雪を散らしながら貰った言葉に驚いて、トキヤは目をまるくした。
誕生日。

「トキヤ!誕生日おめでとう!」

まだ背後にいた音也にまで改めて言われて、ようやくトキヤの中で何かが繋がる。

「…イッチー、今、今日が誰の誕生日か忘れてた?」
「あ…ええ……すみません」

繕いようもないほど動揺してしまったので、トキヤは恥ずかしくなって俯いてしまう。
勿論自分の誕生日であること自体は覚えていたのだが、まさかこんな風に祝われると思っておらず、嬉しい反面どんな顔をすればいいのか分からなくなってしまったのである。
何やら察したらしいレンの助け船に大人しく乗っていると、真斗が道を開けてソファーを示した。

「謝ることではないぞ一ノ瀬。さあ、こちらへ座れ」
「そうそう!立ってないで座れよ!…なんか汗かいてるけど大丈夫か」
「…大丈夫です」

こんな流れになるならもう少し息を整えたかったのが本音だが、翔のせいではない。
とにかく、勧められるままソファーに腰を降ろす。そこへ、すかさずコップを差し出てくる手があった。

「一ノ瀬さん、お茶をどうぞ」
「ありがとうございます」

春歌である。ありがたく受け取って喉を潤すと、ようやく生きた心地がした。

「俺もはりきって走りすぎちゃった、トキヤ、ごめんね…」
「いえ、私もまだまだ鍛える必要があると実感したのであれはあれで良い経験でしたよ」

バッグを返して貰いつつ、トキヤは苦笑を浮かべる。

「トキヤ、あついですか? もう少し温度を下げますか?」
「大丈夫ですよ。それに、あまり下げると愛島さんが寒くなってしまうでしょう。今くらいでちょうど良いです」
「トキヤ…では、あつくなったら言ってくださいね!」
「はい、ありがとうございます」

エアコンのリモコンを握りしめるセシル。彼の奥から那月も身を乗り出していて、バッチリ目が合った。
と言うより、全員がトキヤに大注目している状態である。
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