treasure
□恋愛初心者
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僕には今、付き合い始めて間もない恋人がいる。
その子は僕の苦手な草食動物を代表するような子なのに、何故かその子から目が離せない。
その子は絶えず誰かと群れ、その群れから外れるとすぐに不良達に絡まれる。
本当に目が離せない子。
だけど、その子がただ弱いだけの存在じゃない事を僕は知っている。
彼は周りが思っているほど弱くはない。
彼には強い意志がある。
そして、彼は誰よりも優しい。
そんな彼を僕が一番よく分かってる。
だからきっと、僕はそんな彼に惹かれたんだ。
あの、きらきらと輝く琥珀色の瞳に、僕の心は捕らわれた。
あの子が欲しいと切実に願った。
そして今、愛しのあの子は僕のもの。
誰にも渡したりなんかするもんか。
恋愛初心者
「あの―…、ヒバリさん。ちょっとの間でいいですから、離してもらえませんか……?」
「やだ」
綱吉の願いは虚しく、雲雀は一言だけ言って更に腕の力を強くする。
「…綱吉は僕と一緒に居たくないの?」
「まさか!そんな事、あるわけないじゃないですか!ただ……」
「ただ?」
「教室でするのはどうかと……」
綱吉はちらっと周りにいるクラスメート達に目を送る。
そう、ここは応接室ではなく教室の中。
しかも今は授業中である。
「?それがどうしたって言うの?」
不思議そうに訊いてくる雲雀に、綱吉は珍しく雲雀に対して目眩を感じた。
「ヒバリさん、この状況を見て分かりませんか…ι」
教師とクラスメート達は一体自分達の目の前で何が起きたんだ?!と言いたげな目で固まっているし、獄寺は両手にダイナマイトを抱えていて、今にも投げてきそうな勢いだった。
しかしそれがないのは、獄寺の後ろでにこにこ笑いながらそれを止めている山本のおかげだろう。
しかし、獄寺が暴れたくなるのは仕方のない事だった。
何故なら、綱吉は今、あの誰もが恐れる雲雀恭弥の膝の上に座っているのだから。
二人の関係を知らないクラスメート達は勿論のこと、綱吉を尊敬している獄寺にとって、それはまさに目の毒だ。
そんなクラスメート達の反応を知った綱吉は何とか離れようとするが、更にぎゅっと抱きしめられてしまい、それは失敗に終わる。
「ちょっと、ヒバリさん…」
雲雀に抱きしめられるのが嫌ではない綱吉にとって、本当はこのまま彼の好きにさせてやりたいのだが、教室の中という事もあってそれは出来ない。
「……」
雲雀は無言のまま、綱吉の首筋に自分の顔を埋める。
「「「―――っっっ!!!」」」
そんな雲雀を見てしまった山本以外の哀れな被害者達。
ある者は顔を赤らめ、ある者は歓喜の声を上げ、またある者は目に涙を溜めて悔しがっていた。
「…ヒバリさん、ここじゃあ何ですから応接室に行きましょ……?」
「…うん、分かった」
綱吉は何とか雲雀を移動させる事に成功し、教室内が固まっている中、二人は応接室へと向かった。
「じゅ、10代目?!どちらに行かれるのですか!?10代目〜〜〜!!!」
放心状態から覚めた獄寺は去っていく綱吉に悲痛の叫びを向けたが、二人(特に雲雀)は気にせず歩いて行くのだった。