恋葉歌
□参
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参*「屋上の空」
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「この問の答えは……竜宮さん、答えれる??」
「はい」
指名された白雪は、黒板に書かれた数式の答えをさらさらと書いていく。
「……よって、答えは2X-5と簡潔になります」
「素晴らしいわ、竜宮さん!」
教科書の復習ページの少し難しめの問題。
それを解いただけで、満面の笑みを浮かべる数学教師に、白雪はひきつりながらも笑みを浮かべる。
「ありがとうございます」
自分の席へ戻り、再開された授業に頬杖を付き、周囲にバレないように小さく溜息を付いた。
***
昼休憩
中庭で昼食を取っているのは、白雪・平助・新八・左之助のいつもの4人である。
「今度のクラスマッチでさ〜」
平助と左之助は今度の球技大会の話で盛り上がっていた。
年に2回ある球技大会のうち、夏季球技大会が6月下旬にある。
だがこの学園では球技大会に異様な盛り上がりを見せる為、学期の初めに決めた役員達が5月から準備を始めるのが主流であった。
もう既に各クラスではメンバーを決めたり、練習したりし始める。
新八はまだ球技大会を経験した事のない白雪に、様子や内容を掻い摘んで説明した。
「種目は女子がバレーとバスケで男子がサッカーとバスケとバレーなんだヨ」
「そうなの、皆は何に出るの??」
「俺らは今年も多分バレーだよ。サッカーやバスケは体育でするけど、バレーはクラスマッチくらいしかしないしネ」
「去年のクラスマッチもさ、バレーで…」
白雪と新八が話していると突然平助が会話に加わり、去年のクラスマッチの時に面白かった事などを話し始めた。
話を聞く限り、三人とも運動が得意なようで、今年は是非とも白雪に見ていて欲しいと言われ、試合の時はなるべく応援に行くと約束した。
「新八っつぁんのセッターは最高でさぁ、左之は背が高いからブロックもアタックも楽勝で、あっ、俺はもちろんアタッカーね」
楽しそうに話す平助を見て、思わず白雪も微笑んだ。
「楽しそうな行事ね。楽しみにしてるわ」
今日の昼休みはクラスマッチの話で終わっていった。
***
晴れた日の午後
昼食を食べて満腹感に満たされれば、誰しもが睡魔に襲われる昼下がり。
白雪も例外ではなく、少し眠たそうに次の授業の用意をしていた。
窓際の席なので、ふと窓から空を見上げれば、眩い程の蒼穹にぽつぽつと雲が漂っている。
ただ眺めていると、昼休みに左之助が言っていた事が頭を過ぎり、たった今用意した教科書を机の中に入れ、立ち上がった。
「ごめんなさい、気分が優れないから保健室に行くと先生に伝えてくれるかしら??」
「あっ、はいっ!大丈夫ですか??」
「えぇ、心配ないわ」
席が隣の男子にそう伝言を残し、教室を後にしたのは、授業が始まる10分前であった。
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