恋葉歌

□弐
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弐*「ある日の放課後」




***




「…好きですっ!付き合って下さい」




「………」




白雪が若宮学園に入学して、もう二週間が経とうとしていた。

勉学、スポーツ、容姿。

どれを取ってもパーフェクトな白雪は、入学後、僅か二週間にして有名人であった。
元々男子校であった為か男子の比率が高いこの学園では、そんな白雪に絆された男共が、勇気を振り絞って想いを告げるも玉砕。
だが、今日もまた懲りない一人の男子生徒が白雪を呼び出した。

目の前で顔を赤らめ、告白する男子生徒に白雪は内心溜息を付く。




「気持ちはありがとう。でも、ごめんなさい」




いつものように、言葉だけの礼を込め、無情にも顔色一つ変えずに断る白雪を見て、男子生徒は落胆する。

白雪は用件が終わったので、その場を去ろうと踵を返したその時。

男子生徒が思い掛けない行動をとった。




「あっ…あの白雪さん!俺…」




思わず去ろうとする白雪の腕を掴んだ男子生徒に白雪は、一瞬瞠目し、次の瞬間にはその手を振り払っていた。




「…私に触れる事は許さないわ」




手を振り払われた男子は唖然としている。




「この私に触れる事が出来るのは、私が認めた完璧な男(ひと)だけよ。気安く触れる事は許さないわ」




そう言って去る白雪の背を見つめる男子生徒は、ぼそりと何かを呟いた。




「……かっ…格好良い…」




ぽーっと顔を赤らめた男子だけがその場に佇んでいた。




***




最近、急激に増えた男子からの呼び出しに、今日は一段と疲れた気がした。
溜息を一つ付くと、鞄を持って教室を後にする。
帰ろうと靴箱に行くと、そこには珍しい人が待っていた。




「永倉さん!」




「お疲れ様、白雪チャン。今日、平助は委員会なんだ。俺達も部活はないけど、左之は補習だってサ」



「そうなの。永倉さん一人って珍しわね」




「うん、だから白雪チャンが暇なら、この前言ってたお店に行ってみようかと思って待ってたんダ」



この前と言われて、白雪は「あぁ」と思い出す。

三日くらい前に、いつものように四人で昼食を取っている時、平助が新しく出来たアイス屋さんの話をしていた事を言っているのだろう。
普段、あまりそういう場所に行った事のない白雪は、平助が新装開店キャンペーンで二段アイスが三段になるという説明に目を輝かせた。




「えっ、良いの!?それならメールしてくれたらすぐに来たのに…」




そこまで言ってハッとした。
そう言えば、いつも四人で居る為、平助に連絡さえすれば後の二人とは連絡がつく。
今まで新八や左之助の連絡先を気にした事がなかったのだ。




「俺もメールしようと思ったんだけどサ、知らない事に気が付いてネ」




「だから、今良いかな??」と、携帯を出して苦笑する新八に思わず笑った。




「えぇ、良いわよ。私が先に送れば良いかしら??」



白雪もつられて笑い、携帯を鞄から取り出し、プロフィールの赤外線送信項目を探す。
そしてお互いに携帯を近付け、赤外線送信でアドレス交換を行った。




(そう言えば、平ちゃん以外の男の子にアドを教えるの初めてかも…)




高校に入学しても遠巻きにされ、友達がなかなか出来なかった白雪には少し嬉しい事だ。
もちろん言い寄って来る男共には、最初から教える気もないから、ますますアドレス交換なんかしなかった。




「はい、送信完了っと。じゃぁ、何かあったらメールか電話するヨ」




「えぇ、お願いね」




「じゃぁ、アイス屋さんに行きますか」




「アイスってコーンに三段乗ってるのよね??」




靴を履き替えて並んで正門に歩き出す二人。
普段から大人びている白雪が、こんなに無邪気にアイスの話をするとは…新八は内心、そのギャップに瞠目しながらも可愛らしくアイスについて語る白雪を見て、微笑んだ。















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