リクエスト
□MH/クルペッコ
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ころころと転がり並んだ小石たち。
珍しい紋様をみせるものや、つるつるしたもの、鉱石や宝石の類いもある。
発生器官の空気を調整して、首を低くすると、クルペッコは控えめに鳴いた。そのままちらりとナマエを見上げるのだから、目を丸くするしかない。まるで叱られるかもと、どこかで確信しているような。
「……」
ちらちらびくびく、あまりに下からの姿勢である。クルペッコは嘴を使っておそるおそる、ころりとナマエの方に石を転がした。
足元に転がってきた石がコツリとぶつかる。ころんころん。ころんこつんと後から後から続いてくる。石が集合し終わって、ナマエはクルペッコを見た。
クルペッコは視線を反らした。かわりに申し訳なさそうに鳴いた。
小石を見る。キラキラと輝き、己の色合いや紋様を主張している。
「…………はは〜なるほど」
ナマエはなんとなく。クルペッコのしようとしている事が分かった。賄賂だ。
正しい意味合いは、物で釣ろう。
いや、釣られてくれと言うべきか。ちらと彼の様子をみればなるほどどうも正解らしい。
クルペッコは、本当に、ばつの悪そうに身を屈めた。
「物で釣られる、安い女に惚れたんだ?」
途端にクルペッコの身体が起き上がる。なにか、相性の悪い武器でもくらったのかと、思うほどの勢いである。
跳ね上がったクルペッコは真っ直ぐにナマエの傍に来て、慌てたように小石を蹴った。あっという間に小石が逃げていく。
ナマエはにっこりと笑みの形に口を曲げた。散らばる小石に、うって代わってやって来たのはクルペッコである。まるで石のように。硬直している。
「あーあー、なあんか、すごく…、傷ついたな〜」
わざとらしいだろうか、肩を竦めて言ってやる。
そうするとクルペッコは弾かれたように慌てだすのだ。はずみで間抜けた音が彼の嘴から漏れた。力が抜ける音が、発生器官からこぼれて落ちた。
不協和音に、だがクルペッコは構っていられないらしい。
体を擦り寄せたり、嘴で撫でたり、翼でくるんだり。―――機嫌をとり戻すのに必死である。
本当は戻すどころか損なってもおらず、むしろ、
とても機嫌がいいのだけれど、ナマエはなにも言わずに黙っておいた。
自分のために、あれやこれや、首と体が右往左往しているクルペッコを見て、
もう随分どうしようもないくらい参っているのだけれど。慌てる彼の誤解を解かないのは、愛ゆえ、とでも言っておこう。
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