リクエスト

□SH/三角頭
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ぬらりと血と錆にまみれた腕が伸びてくる。いくら逃げ惑おうが、拒絶しようが、払いきれない腕だ。どこまでも追いかけてくる。追いかけて、閉じ込める腕だ。
ナマエは背に回された腕に、諦めたように捕まった。


「なんで殺さないわけ」


呟いても返答は得られない。独り言となって朽ちていく。
三角頭はただ片腕に鉈を持ち、片腕でハグをしてくるだけだ。体臭を腐らせたような臭いが鼻を刺す。


「どうして、私を、殺そうとしないわけ」


ナマエはぽつりと呟いた。
その言葉に返答はなく、三角頭はナマエに縋りついていて、やはり独り言となるだけだったけど。

捜しにきた目当ての友人を。形は違えど同じ異形者たちを。殺そうとしているのは、この三角頭の異形本人だ。
ナマエは考える。腑に落ちない。なぜ彼らを殺戮する者が、自分を殺さない。

悶々とすれば決まって三角頭は鉈を握る手をきつくする。床と鉈が金切り声をあげる。
三角頭の空いた片腕がナマエの頭に伸びて、胸板に押さえつけられる。

それ以上の思考を咎めるように押さえつけて閉じ込める。



「なんだか…ね。うまく丸め込まれてる気がするけども」



するりと拘束をほどいて、三角頭は鉈を担いで歩き出す。それ以上は答える必要も知る必要もないようだ。

数歩歩いて立ち止まり、また数歩歩いて立ち止まる。鉈の重量に揺られながら進むその背中が、ナマエはやるせなくて肩の力を抜いた。


「分かってるよ、ついてくよ」


ナマエが足を踏み出せば、三角頭は今度こそ揺らり揺れつつもスムーズに動きだす。
最終的に、彼を許容してしまっている。答えが得られない事含め、ナマエを逃がさないことも。―――――もしかしたら、だから三角頭も自分を殺さないのだろうか。

ならなぜ、三角頭は、彼らを、殺すに至るのだろう、と。
また悶々としだすナマエなのだが、するとまた、
それを咎めるように三角頭の腕が伸びてくるのだ。

つまるところ深く考えないのがミソらしい。
また回された臭気漂う腕を受け止めながら、ナマエは感じ取った。








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