リクエスト

□MH/イビルジョー
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ギルド主催の採集ツアー砂原にて、ノリコネバッタを探すついでにクルペッコを狩れたらいいな。そんな軽い気持ちで来ていたナマエだったが、もはやそうも言えなくなってきた。ちらりと後ろを振り返ればピッタリくっついて来ている、恐怖心を駆り立てる象徴、イビルジョー。彼がずっと離れないのである。

クルペッコが最期の意趣返しとばかりに高らかに呼んだのが、コレ。
おかげでイビルジョーにクルペッコを食われるわ、回収地点に行けないわでさんざんである。おかげで終わりの見えないツアーとなった。
食われた時には、脱力感もあったが「ざまあみやがれ」という気持ちも少しはあった。あったが、ここまで長いと正直ナマエの心身は減りに磨り減っていった。


「………お腹空いた」


ぐるり、と響く自身の腹にナマエは手を当てるが、狩ろうという気にはなれなかった。と、いうのもイビルジョーが、ナマエが狩ったそばから獲物を平らげていくからで。つい先ほども、アプトノスを目の前で掬い取られたばかりであった。
イビルジョーは後味を楽しむようにモゴモゴと舌を遊ばせている。それが恨めしく、ナマエは気持ちそのままにイビルジョーを睨み上げたが、ジロリと応戦する獰猛な視線に視線を反らした。出来るものならクルペッコな初心者に、凶暴竜を相手にする実力があるはずない。

狩っては食われ、狩っては食われ…。
無限サイクルの末に悲鳴を上げる食欲をナマエは水でなだめていたが、それも限界に来ている。ナマエは膝を折り、地面にうつ伏した。

クルペッコでの事をどう学習したのか、イビルジョーは離れない。
労力の節約なのか、片時も離れず、ナマエの獲物を掠め取っていく。ナマエが捕食の対象にならなかったのは、幸いだが、これでは餓死も時間の問題だ。笑える話かもしれないが、洒落にもならない話だ。

ぼうっとナマエは彼方まで続く地面を見た。

その端をポタリと赤い液体が落ちる。
次に重い重低音と共に何かが地面に落ちた。
次いでナマエの体を何かがつつく。その何かはゴツゴツとしていたり、柔らかかったりしているが、とても大きな何かがかなり加減をしているような。つつく、というよりは、つつく様に押されるようだ、とナマエは思った。

しかもその何かはぐいぐいとナマエをせっつくので、ナマエは力を振り絞ってその何かを見るために起き上がった。



「! イビルジョー、」



目を見開くナマエの、傍には確かにイビルジョーがその身を屈めていた。
わなわなと唇が震える。

「……どう、いう」

疲労と驚愕が混ざる掠れた声であったが、イビルジョーは泰然と居座っている。
驚くナマエをよそに、イビルジョーは口先を器用に使って、地面に落とした何かを押し出した。アプトノスだ。砕かれるように、喉に一発。イビルジョーは、見事に仕留められているなあ、と半ば呆然と眺めるナマエの更に近くにアプトノスを押し出した。
促すように更にひと押し。


「た、食べろ…って事…?」


混乱気味に、訳もわからなくなったナマエは横たわるアプトノスと座すイビルジョーの間くらいに手を伸ばした。
イビルジョーは伸ばしたナマエの手の下に、自身の頭を差し込み、アプトノスの方へと運んだ。






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