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□ベトベターが触らせてくれない
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「ベトベター、ちょっとおいで―――」



ぱっ と避けられ、ナマエの目は据わった。あくまで視線で訴える、言葉は使わない。
睨まれているベトベターは、けれど申し訳ない様に縮こまりに縮こまるから、言えない。ナマエは空を切った手を下ろした。それだけで、他は、膠着したままである。

ベトベターがナマエの元に来てから、数ヶ月。
ふうと吐いた溜め息でさえ、ベトベターはびくりと身を震わすのだ。いい加減慣れて欲しい。



「ベトベター」



苛立ちを隠さずに腕を伸ばす。来い。
ベトベターは怯えを全面に出していやいやと首を振る。嫌だ。
びくびくと、可哀想なくらい震える。拒絶するベトベターに、それでも、ナマエはそれ以上は言えないのだ。丸い目は一杯に涙を溜め込んで、今にも溢れそうだったから。

懐いてないから、そう言われると言い返せない。だが溝を埋めようと思い、近づいても、抱き寄せようとしても、避けられるのだ。誰にも触らせない。
埒があかず、今日こそはと思っていた分、ナマエは大きな溜め息を隠せなかった。
原因は分かっている。
毒タイプで、ヘドロのボディ。
だからこそ、納得がいかない。

「ベトベター、」

ナマエはなるべく、感情を抑えるように気を付けながら、ベトベターに話しかける。
びく、と震えたが、ベトベターは濡れた丸い目をナマエに向けた。


「自分の体が、怖いのかもしれない。私を気遣ってくれてるのかもしれない、でも、
それでも凄く寂しいの、分かる?」


ベトベターは目を見開いた。手を差しのばすナマエが、酷く傷ついた顔でいたのだ。
それでも距離を縮める手に、触れる訳にはいかない。だって毒だもの。
ベトベターはナマエの手を避けて、もっと向こうに、と。それ以上行けないのに、身を捩る。

ごめんなさい。言葉があればそう伝える、伝えたい。実際には持ってないから、ボロボロと、涙を溢すしかないけれど。
泣き出したベトベターを見て、ナマエも泣きたい気持ちになって、ごめんねと言ってボールに戻した。






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