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□感謝したらシェイミが爆発
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シェイミといえばシンオウ地方にあるソノオの花畑伝説で有名であるが、だからといって何も、生息地がソノオの花畑に限定されるわけではないらしい。

ナマエは自分が遭遇した出来事にそんな感想を抱いた。


「うっそシェイミ・・・?」


自分の膝の上できゃらきゃらと鳴きながら転がるポケモンを半信半疑で呼んでみる。
ナマエの呼びかけに、元気よくシェイミは鳴き声をあげた。ほんのりと芳香が鼻をくすぐる。なにこの子かわいい。

まさかタマムシの外れの野原で出会うとは。目を点にしたままナマエは、応えるように小さな片足をあげたシェイミを撫でてみた。
シェイミは自身を撫でるその手つきにふにゃりと力を抜く。
突然力を抜いたシェイミにナマエは撫でていた手を跳ね上げた。とてつもない軽い身体が膝の上に転がっている。すべて委ねている。

小ポケモンや赤ちゃんを前にすると、その柔らかさに戸惑うタイプがいるが、ナマエはまさにそれである。
うええぇええ、と呻きながら膝上の小さなポケモンを、けれどどかすのは惜しまれるし良心が・・・。と持て余す。
シェイミはシェイミでどうしたのと首を傾げて
ナマエを見上げていた。

「ええええええ可愛いこの子ちょう可愛いぃいいい」

――もだえ転げたい。だが必死に抑えて震える手でそっ、とシェイミを包み込む。なにこの子なにこの天使。
なに天使級のかわいさ。
休日の息抜きで、またとない幸運でまたとない体験である。

膝の上にシェイミ。
まさにふたつとない触れ合い体験で、ナマエは笑うシェイミにつられて顔を綻ばせるが、なかなかどうして、至福のひと時には邪魔が入りやすい。

ぶわ、とふいた風がそれを邪魔をしだした。

風、というよりは風に運ばれる空気である。町の方からの空気がナマエの肺を刺激する。
とたんに過敏に反応し出した肺が体のなかの酸素を吐き出し閉め出す。今度はその酸素が喉を痛めつけるので、咳が絶え間なく出始める。
身を屈めてやり過ごそうとしても、そうはいかず、ナマエの目に涙が浮かんだ。
シェイミは腹によじ登ってナマエの安否を問う。



「ああ、っ・・・大丈夫大丈夫、っ! 喘息だから、ただの」



喘息わかるかなあ、とナマエは苦笑した。
もちろんシェイミには喘息がなにかは分からないが、ナマエが苦しいのは分かる。苦しそうに笑うナマエに目尻を下げた。

分からない、が、風がふいてから咳き込み出したのは、シェイミも理解していた。
困った顔をしていたシェイミだが一声鳴くとナマエの膝の上から飛び降りた。

「シェイミ?」

ナマエの呼びかけに元気よく応える、その声と一緒に、シェイミの体が光を帯びる。
同時にナマエは息苦しさから解放されだした。
楽になった呼吸と、膝にまたよじ登り出したシェイミに首を傾げる。――シェイミの体はうっすらと光っていた。

なんだろう、と不思議に思うがシェイミが何かしてくれたのは違いない。
膝に再び落ち着いたシェイミを撫でる。きゅうきゅうと細く甲高い声がナマエに向けられる。ありがとうシェイミ。
急に咳いたために掠れた声でそう告げる。
ニコニコと笑うシェイミの体がいっそう強く輝いて、カッと光が弾けた。











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