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□サブマスと奇妙な隣人とサメハダー
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朝目を覚まし、隣にいる半身をみる。この瞬間がサメハダーにとって何よりも幸せを実感できる一時であった。腕に閉じ込める距離にいて、かつそれができる。以前までは叶わなかったことだ。
胸が満たされる。――この表現が果たしてポケモンである自分に適用されるのかしらないが、目の前で寝息をたてるナマエがサメハダーは愛しかった。
米神にキスをするのも髪を撫でるのも抱きしめるのも、本当は柄じゃないがナマエの寝つきの良さにあやかれる朝は、そういった事でもサメハダーにとってシアワセなのだ。

しばらくそうやって髪を撫でたり、寝顔を眺めたりしていたサメハダーだが、そろり、と。静かに寝床から離れて台所へと向かった。
冷蔵庫を開けてペットボトルをとりだす。パタン、と小さな音を立てて閉める。キャップを外し、水を口に含む。
ひんやりとした感触が喉を伝って潤していった。
外を見れば柔らかくも明るい、幾条かの光の筋がカーテンの隙間から踊っている。明るい陽の光の、踊る様を見ていると、体内時計が空腹を訴えだす。朝食の時間だ。しかし彼女は、まだ夢の中で、寝ているわけで。だが自分の腹がぐうの音を上げているわけで。

「………」

どうしようか。
そう逡巡していると、寝床の方から小さなうなり声がサメハダーの耳を打った。
もぞもぞと動きだすかけ布団が収まり、そこからぼさぼさの寝ぼけ頭が飛び出る。
まだぼんやりとした眼でこちらを見てくる。眠たげなナマエの傍にサメハダーは歩みより、布団を抱えるように彼女に腕を回してみた。とくに意味もなく。そうしたかっただけである。



「……………おはよう………なんか、お腹…空いたから、起きた」



ぐう、
タイミングよく鳴った、どちらかの腹にサメハダーは笑った。ナマエはまだぼんやりとやる気のない目で、ぼんやりと眠たげにサメハダーを眺めては首を傾げるので、またサメハダーは胸が温かくなった。
なぜか嬉しくなる朝である。






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