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□サブマスと奇妙な隣人とサメハダー
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新聞を折り畳んでテレビをつける。耳に入る騒音を消すようにボリュームを上げていく。ガシャン。けたたましい音に、何か割れたなと予測をつける。
 ドン ッ。
次に気がついたときは病室のベッドの上で、両足はギプスで固められ左手は使えない状況だった。男は体を襲う痛みと日々のストレスに大きく顔を歪め、とうとう我慢に見切りをつけた。



*



「では、これで契約ですね」
「ありがとうございます。…本当に良かったんですか?」

「ええ」

にこりと笑みを返しつつ書類をまとめる。大家の笑みにナマエも強く言えずに相槌をうった。しかし本当にありえない。まとめるとこうだ。

隣家の兄弟ゲンカという名の激闘に、大家の前住居がとばっちりを受けた。家は全壊といっても良いくらいで、彼自身も衝撃で放り出されたのと、同じく放られた家具による怪我のせいで1年病院生活だったらしい。
退院して「どうしろと…」と思いつつ帰宅したら、元凶の隣人もちで家が直っていた。しかし先の体験からもう住む気になれない。すると今度は一戸建て(庭付き)を2件一括で買ってもお釣りが来るくらいの見舞金を送ってくれたという。

ナマエに言わせればンなアホな。ありえなくね?
喧嘩で全壊お詫びに庭付き、など夢の話だがこうして格安借家としてあるのだから。
なんだかなあ。その一言につきる。

「ではこちらの書類にサインしていただいたら今日から使えますよ

書類をまとめ、一枚だけ差し出す大家に微妙な笑みを返して、ナマエは隣を見た。ちらりと彼を伺う。ーーどうやら賛成らしい。ナマエはサイン欄にペンを走らせた。



べつに、隣人が居ようが居まいが関係ない。もとから関わるつもりもないのだから、確かに二人にとっては些事であった。




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