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□しあわせになる毒
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毒タイプのポケモンというと、一般的なイメージはあまりよくない。
扱いにとても気を使うからだ。中には常に毒を放出しているものや、からだ自体が毒性を持つポケモンがいる。
そういったポケモンは気を使う。他者に害が及ばない事。それ以上にトレーナー自身に害が及ばない事。ポケモンそれ自体よりも、ポケモンがもつ毒に注意を払う必要があった。

だから毒タイプを主体とする者は少ない。その少ない彼らは、毒使いと呼ばれる。
毒タイプポケモンを好んで使う者は、たいてい、毒の扱いに長けている。毒を以て毒を制す。毒を蠱毒にも妙薬にもできるのだ。

そうした毒使いは、個人でなく、血族などといった組織単位で輩出される。
たとえば薬師だったり、暗い背景をもつ職種だったり。四天王のひとりは血脈がもつその歴史をウリにしているが。まさに毒にも薬にもなる存在であり、ナマエ自身も、そのような毒使い一族の出であった。

お陰で物心ついた時から「ポケモンと言えば」と聞かれたら「毒ポケモン」と答えるくらいには身近に毒タイプがいて、
毒ポケモンにも好かれていたから、幼少の頃はポケモンは皆毒タイプなのだと勘違いしていたこともある。付き合い方を損なわなければ彼らはとても愛嬌のある存在であったのだ。

毒タイプのポケモンでいっぱいの屋敷は近隣住人から恐れられ、敬遠されていたが一向にかまわなかった。
屋敷に人が近づかないのは好都合。そうとさえ思う。
のんびりと仕事し、ポケモンらと戯れ、彼らと共に過ごす。

まっとうな人間関係を持たないのは見方を変えれば―――不健全。そう言われるかもしれない。
そうと指摘する人間はいない。ナマエもナマエで、踏まえて尚、閉鎖空間に入り浸る。
屋敷のポケモンたちもそれを知った上で、ナマエを甘やかし、飴を与える。甘えて、飴をもらう。
彼らは求められれば、もしくはられずとも、機嫌よく毒を流した。
幸福でとろけた目を歪めて、トロトロと、甘い毒を垂れ流す。たっぷり浸からせてやるのだ。爪の先から頭のてっぺんまで。余すことなく惜しむことなく毒を吐く。

ナマエがそうと思うように、彼らもまた、ナマエが好ましかった。
毒に浸かって、ヒトとしての在り方を損なっても手を伸ばす彼女を、ポケモンたちは、非常に好ましいと感じている。


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