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□コイキングとトレーナーの最弱コンビが奮起する
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びちんばたんと尾びれが跳ねる。その度にナマエの頬に水滴とか、地面の細かな石粒だとかが当たった。
びちんばたんと尾びれが跳ねる。その度にコイキングは苦しそうに口を開いては閉じる。実際に苦しいわけでなく、あくまで「そう」見えるだけである。コイキングは弱いが生命力自体は強い。水がなくても活動に支障がないのだが、それでもコイキングは苦しげに口を開閉している。
その横でナマエは財布を開く。ぱちり、と留め具を開けて中身を確認した。



「1400円」



1400円。せんよんひゃく。やられた。ナマエは顔をしかめる。おまもりこばん持たせやがって。
お陰で予想以上に出費がかさみ、ナマエの財布は火がついていた。からっぽのからりんどうで、ガランドウである。お陰で帰りの電車代もない。遠出した結果がこれだよ。虚しい。その一言に尽きる。しかしバトルに負けたのが何より悔しくて、ナマエは唇を噛んだ。同じく心が空っぽだった。


「コイキング嘗めんなちくしょう」


ぎゅうと拳を握りしめて、財布を乱暴にバッグにしまう。
コイキングはびちんばたんと跳ねている。ナマエの足元で酸欠みたく、パク、パク、口を動かしている。ナマエの独白に対する反応はない。ただびちり、と跳ねる度にコイキングの身体から水滴が散って、それがナマエの脛辺りを濡らしていた。我関せず跳ねている。ナマエも我関せずに煮え立つくらい怒っていた。



「おまえ弱いよな」



び、ち、り。


コイキングが動きを止める。

ナマエは構わず続けた。さっきまでのやり取りを思い出しながら。


「おまえ弱いよな、なのにコイキングとか、笑えるわ、まあ小遣い稼げたからいいけど、ポケモン弱いならトレーナーまで弱いのかよ…だと?」


一言一句違わず諳じてみせたナマエに、またコイキングは跳ねだした。先程のバトルでトレーナーが放った言葉である。最後まで言い切ったナマエの呼び掛けに、応えるようにコイキングは跳ねだした。
びちんばたんびたんばちん。びちびちびちびち!
尾びれが地面を叩く度に地面から鳴る殴打音がナマエの憤りとシンクロする。


「誰が弱くて、誰のポケモンが弱いって?コイキング、何処の人達のこと言ってんのか分かる?」


分からないよねえ、とナマエは続けた。コイキングも一際大きく跳ねると、そうだと言わんばかりに大きく跳躍しだした。
おまもりこばん持たせやがって。最初に確認したトレーナーカードを思い出す。顔まではっきり思い出せるし、名前も分かる。


「短パン小僧をぶちのめす。コイキング、あんたと一緒に」


ぐっと拳を握るナマエの横でコイキングも強く跳び跳ねた。










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