clapping monkey
□お題拍手小説
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【ケーキ】
しばらく躊躇した後、とうとう意を決して彼女は彼の前に小さな箱を差し出した。
当の彼は、瞳だけを彼女に移す。
「…はい。コレ、あげる」
箱を差し出された大妖怪―――基い殺生丸は、黙ったまま彼女から箱へと視線を移した。
彼女は、やっぱりやめておいたほうが良かったか、と後悔の念を抱きつつ、目を軽く伏せた。
「……なんだ」
低い声が静かに響く。予想通りの反応に、彼女は少々うなだれる。
久しぶりに現代に帰った彼女には、密かに企てていたものがあった。自分はそんなに器用でないということを知っている彼女であったが、どうしても今回は自分で作ってみたかった。そして人生初のケーキというものを駆使して作り、それを小さな箱に詰めた。
…彼の為に。
「一応ちゃんとした食べ物よ。……私が作った」
――殺生丸の為に。
そう言おうが言うまいが、彼が受け取ることがないことを、彼女は知っている。だからそんなことは言わないのだ。
伏せ気味だった目を開けて、彼のことをうかがった。切れ長の、鋭い金目とぶつかる。
心なしか眉の端が下がった自分に気付く。何の反応も示さない彼を前に彼女は落胆して、差し出した箱をす‥と下げた。
「――お前が食べればいい」
滅多に話すことのない彼に、少々驚いて顔を上げる。
「…その甘い……妙な匂いだけで、十分だ」
まだ金色の目が自分を捉えている。彼女は手に持った箱に目を移してしばらく見つめたあと、ふふ‥と笑みを漏らした。
そして木の根元に腰掛けていた彼の隣りに腰を降ろす。
「‥結構上手く出来たのになー」
そう言いながら、彼女は妙に嬉しそうにケーキの一かけらを口に入れた。優しい甘さが広がった。
鼻の利く彼への、手作りのプレゼント。彼にとっては少し妙な…甘い匂いのプレゼント。
《後書き》
初殺生丸夢短編!!!
ん〜〜〜〜彼は難しい(笑)
また書けたら書こうと思います♪
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