clapping monkey

□お題拍手小説
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【振り返れば】



目が覚めた。


頬に違和感を感じて、手で触れてみた。ほんのわずかな水が指に絡まる。

涙が流れた跡を、手でぐっと拭った。

辺りは静寂に包まれ、頭上には星々と月だけが囁きあう闇の空。


自分の息遣いすらリアルに耳に届いてしまいそうなほどの、あまりにも凍て付いた静かな空気に、不安が募る。

先ほどの悪夢がひたひたと歩み寄って来る気がして。

自分が黒い何かに段々包まれていってしまいそうな気がして。

動揺で目があちこちに、せわしく動く。

高鳴った胸を掴めば、また涙が溢れそうになる。







でも、

私は、ふと後ろを振り返るんだ。


ゆっくり向いて見れば――赤い衣と銀色の髪が。

袖に手を入れたまま腰掛けていて。

せっかく伏せていた瞳を、何かを言った訳でもないのに、何かに気付いたようにふ‥と開けてくれるんだ。

恐怖に負けそうだった私の目と合うと、一瞬だけ目を細めてくれるんだ。

何を言ってくれる訳じゃない。でも…私はその瞳に救われるんだ。




そっと振り返れば……


あなたがいる。










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