clapping monkey
□桜
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まだ少し冬の名残に身を任せた夜。赤い衣一つに身を包んだその頼りない姿を、誰が見守っていただろう。
唯一心に残る拠り所は、自分の生の時間が許す限り息子を包み込んだ、母親の温もり。もしも願いが叶うのなら、もう一度会いたいという少年の思い。
…しかしそれは、呆気なく裏切られる。
それを、まるであざ笑うかのような、ざわざわと風に揺られて枝と花の両方が騒ぐ、夜の桜。
月明りに照らされて、不気味に薄く白い塊がざわめく姿は、寂しいという思いに加え、恐怖を心に植え付けずにはいられなかった。
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