cheerful canary

□逆照る照る坊主
2ページ/5ページ




見上げた銀髪は、少し驚いたように金色の目を見開いた。そして私は、自分で言ったくせに今更ながら恥ずかしさを頭に昇らせる。さっきあれほど沸き立った血はなんだったのか。説明なんて、てんでつかない。

私は顔を布団におずおずと埋めたから、彼が今どんな顔をしてるかわからない。だから、再び枕元に腰を降ろした音に、驚きを隠せなかった。


「……犬夜…」

しばらく赤い衣を見つめていた。ただ黙って側に居てくれる目の前の銀の後ろ髪が、暖かくて…愛しくて。

熱とだるさが体を支配しているこんな時に、誰かが側にいるというだけで、こんなにも心強いものだろうか。こんなにも寂しさを癒してくれるものだろうか。…それとも側にいるのが、彼だから…?




透き通った銀色の髪先。なんでこんなに綺麗な髪をしているのかと思う。
胡座をかいたまま私に背中を向けて居る彼の後ろで、私は熱でほてった手を動かした。

いいだろうか。こんなときくらい許されるだろうか。

「……犬夜叉…」

許されるだろうか。こんなときくらいは、私の我が儘を許してくれるだろうか。

「あ…?」

銀髪がさらりと揺れて彼が私を見る。


「あの…………手…握ってて…?」

もう、熱に任せて言ってしまえ。今日は具合が悪いんだから、全部そいつのせいにしてしまえ。そう心の中で呟いた。



「………ったく…」

そう言って、目の前に差し出された大きな手。

「………ん」

驚いて目を思わずみはっていた私に、じれったいとでも言わんばかりにずいっと手が近付いた。

嬉しくて、嬉しくて。許してくれた我が儘に感謝して。
そ‥と右手で、その自分より一回り大きな手に触れた。長い指だなぁ‥なんて思っていたら、その指が折り曲げられて、私の手を易々と包み込んでしまった。

「…………//」

熱を持った自分のよりも少しひんやりした彼の手。思わず左手も上に重ねていた。






.
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ