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□シュガーとスパイス
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僕はもううんざりしているんだ。何にって?そりゃ僕の隣に座る、能無しダメ女に。

今日だって待ち合わせに何分遅刻したと思う?40分だ、40分。このあっつい日に、この僕を、40分も待たせたんだ。もう1度言ってあげようか。40分!

もはや犯罪だ。それなのにこいつは悠々と寝はじめるし。この映画始まってからまだ10分も経ってないぞ。てかまだ主人公すら登場してないし。てかいびきかくなし。てか口にポップコーン入れたまま寝るなし。最悪、僕が恥ずかしい思いをするだけだ。って、なんで僕がこんな思いをしなきゃなんだ。羞恥にさらされるべきなのは、こいつだろ。おい隣の男、こっちを見るな。この寝息といびきは僕じゃない。こいつだ。この能無しダメ女だ。だからこっち見るな。いやだからこっち見るな。こいつを見るなって言ってるんだ、おい聞いてるのか。だぁーっ!もう!


「起きろダメ女!」

「…うあ」

「出るぞ」

「え、うそ、もう終わっちゃったの?え、やば」

「違う。とにかく早く立て歩け出ろ」


もう耐えられない。こいつと映画館なんか二度と来るもんか。チケット代の無駄だ。てか主人公まだ見てないし。ほんっとにお金の無駄だ。


「…私、寝ちゃってた?」

「そうだな。いびきもかいてたぞ」

「げっ、まじで?起こしてよ」


この能無しダメ女。なーにが、げっ、まじで?だ。なーにが、起こしてよ、だ。昨日は遅くまでバイトだったってぼやいてたのはどこのどいつだ。能が無いやつはこれだから困る。自分が言ったことも覚えてないのか。


「ねーねー」

「なんだ」

「お昼食べない?ちなみにパフェがおいしいとこね」


この女、自分の都合しか考えてないじゃないか。せめて謝るくらいしろ。待ち合わせで、この僕を40分待たせたことから、映画館でどうどうといびきをかいてこの僕を困らせたこと。


「パフェおごってあげるから」


この能無しダメ女。ふつうそこは、男であるこの僕におごらせるだろ。


「だからね」

「ああ」

「嫌いになっちゃだめだよ、私のこと」


さっきまでのイライラはどこへ行ったのやら。能無しダメ女は欠点ばかりなのに、ぼくはこいつにぞっこんなんだ。ああ、僕も、どうしようもないダメ男だな。









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