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□私かお前か
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この死んだ男、壱縷は、レベルEだということだ。そして私の後ろにはこれを殺した奴、零が立っている。片手にあの銃をぶら下げて。
なぜ実の兄弟を殺せるのだろうか。泣くのなら殺さなければいいものを。まったく理解ができない。
私だって泣きたい。私なりに壱縷を愛していた。だから仲間にしたかった。首に牙をさした。それがいけないことだと?私はそれしか知らない、愛情表現というものを。キスなんてものじゃ、意味はないから。
ああ、零。あんたはこれでまた、純血種を恨む理由が増えたね。私はこれでまたハンターを恨む理由が増えた訳だけど。
泣くのなら、殺さなければいいものを。
私だって愛していた。私だって涙くらい出る。悔しいけど、きっと零と私の、壱縷に対する思いは同じくらいなんだろう。
愛していた、仲間にしたかった。ただそれだけ。
それは間違いだったのだろうか。
当の壱縷はもう答えてくれない。胸からまだ血が止まらない。銃弾は心臓付近で止まったかもしれない。幸か不幸か、壱縷はこの銃の持ち主が誰か知らずにいっただろう。
ちらりと後ろを見ると、視界に入るあの銀髪。ガチャリと鈍い音が耳に響く。
零、お前の銃口、次は私を狙うのか。
ぼーっと目の前の男を眺める。はたしてどちらが悪いのか。私はどちらを恨むべきなのか。
彼を殺したのはお前?それとも、
私かお前か
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