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□優しい味
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てゆーかたかがホットカルピスになぜこいつがこんなにこだわるんだ。私はいいんだ、りまちゃんの件があるし
まさかこいつもりまちゃんに対して…
「下心とか、あるの?」
「は?」
じゃなきゃホットカルピスくらいくれてもいーきがする。
家は金持ちってどっかで聞いたし、どーせ家ではいいもん飲んでんでしょーよ。庶民の私にとってはホットカルピスは贅沢品ゆえに1日の褒美としてこれを飲む時はまさに至上の至福なのだ。ってちと大袈裟になりました
つまり金持ちなこいつが何もこんなに頑固になる理由はりまちゃんにあるとしか考えられない、と私的思考中心での結論にいたった。
「まぁいーや、同じファンってゆーか同志として許してやるよ」
「なんか話しついてけないんだけど」
「まぁ照れるな少年」
でもホットカルピスは飲みたいから帰りにコンビニで買おう。まあめんどーだけど意外な発見もできたことだし、いっか。
ガコンッ
「なにまだ買うの?」
「あんたが好きな飲み物飲むのとか、よく考えたらなんかきもい」
「喧嘩うってんのかこら」
「だからそれ、もういらない」
そう言って今しがた買ったばかりの何か別の飲み物を自販機から取り出し、反対の手に持っていたホットカルピスを私の頭の上に素早く、上手い具合に乗っけた支葵千里の顔はどこか満足気だった。
「ぷ、まぬけ」
「え、なに頭の上、これってさホットカルピ…」
「はいはいはい、ちなみにフタ、開いてるから」
「えぇぇぇぇぇ!」
「せいぜい頑張って」
そう言って背中を向けた支葵千里はそのまま離れていった。
「ちょっとフタァァァ!」
カルピスは好きだけどカルピスまみれはごめんである。
とにかく慌てずゆっくりとバランスをとりながら頭上のホットカルピスを救出したが結局それにはフタはきちんとついていた。
「騙された…」
急にどっと疲れた。なんだかすごく疲れた1日だったな今日。まさかあいつがあんな強情だとは、しかもまさかの同志とは。とにかく自分おつかれさま。
にしてもなんでいきなりあいつ、これくれたんだろう?
「よくわっかんないなー」
そうぼやきながら少しぬるくなってしまったホットカルピスを口にした。気のせいなのかもしれないけど、
いつもより優しい味がした。
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