□優しい味
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ガコンッ


「あっ」



渇いた音ともに表示された短い文字に思わず声がもれた。



だって私の大好きな、だいすきな





「あ、売り切れちゃった」



自販機の前にいる支葵千里は私の大好きなホットカルピスを手にして悠長な声て、残念だねと付け加えた。



「あっ、ごめんそれ私のなんだけどなッ」

「なにぶりっての、きーもーいー」



どっちがぶりってんだよ、きもいとか普通に言えって。お前の方が数百倍ぶりってんじゃん。
という言葉を飲み込み、とにかく今はこいつから愛しのホットカルピスさんを奪還しなきゃいけない、なんとしてでも



「こっちが下手にでてんだけど?それ、私のだから」

「他にもあんじゃん、飲み物」




いやホットカルピスじゃなきゃいけないんだよどーしても。
これはこの学校にきて以来あの可愛い可愛いりまちゃんが冬に必ず飲むのをみて私もなんか飲むのが癖になっちゃいましたとかいう下心からじゃあないけど。

とにもかくにも私にとってホットカルピスは1日の労力の代価でありしかも特に今日はとある事情により心身困憊状態にある私にはなおさら必要なのである。



「あのさ、ひんし状態の私からカルピス取り上げたらどうなると思ってんの?」

「死ぬんじゃない」

「あんたが死ね」

「あっそ。ぜったいこれあげない、あげる気なんて始めからないけど」

「あ、う、ごめ、いや、頼む!ほんとうちライフポイント残り1なんだって」




なぜって私はたった今、説教が終わったばかり。で、しかもこれまたうるさい英と2人であのネチ野郎(枢)から説教を食らったなか、変態英はなんか終始上の空でどことなく幸せそうだったのにさらに機嫌を悪くしたネチ野郎がもう英は邪魔、とかいって最終的にネチ野郎と2人きりという恐ろしいシチュエーションだったわけで。



「その上反省文までも書かされたというオプションつきだったんだぞ!想像してみなよこの惨事!」

「たしかに、なんかうざったそう」

「うざったいなんてもんじゃあ言い表せないけどね。だからかわいそうじゃん、私」

「ふーん、だから?」

「だからそれ、」



そういって右手をぐいとこいつの前に差し出した。哀れな私にお恵みを



「いやいや俺が先手打ったし」

「なんだよどケチ!か弱い私から唯一の癒しまでも奪うわけ?」

「なに言ってんの説教うけたりてないんじゃない」

「うっわ、目潰ししてやりたいんですけど」





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