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□あの子
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キーンコーンカーンコーン
「かーなーめせんぱーい!」
きた。あの子いつも6限が終わると僕の教室にくる。あぁ、頼むから手を振らないでほしい。
「こんにちは」
「こんにちは先輩。今日も一段と素敵ですね!あ、こんなところにホコリがっ」
そう言って僕の肩をさっさっと手ではらう。気付いてるのかな、クラスの女子の君に対する痛い視線。
「…で、何かな?」
「いえ特に何もありません!」
にっこにこ。効果音が付きそうなくらい満面の笑みの君。僕は自然とつられ笑いをしてしまう。
「何がそんなに楽しいの?」
「私がですか?」
「そうだよ」
「枢先輩に今日も会えて話せたからです!」
にっこにっこ。確かこんなキャラクターがいた気がする。真横のトトロという映画に出てくるメイという名前の女の子。
「先輩これから委員会のお仕事ですよね?」
「うん」
「そうですか〜」
シューンと耳を垂れ下げた子犬みたい、と僕は思った。ここまで感情が分かりやすい人間も珍しい。
「じゃあ先輩頑張ってくださいね、また明日!」
「また、ね」
「失礼します!!」
なぜあんなに声が大きいのか。華奢な体付きだけど、どこか運動部にでも所属してるのか。
そういえば僕はあの子の名前すらまだ知らない。
キーンコーンカーンコーン
6限終了のチャイム。自然と目線がドアにいく。
「かーなーめせんぱーい!」
今日は、手を振るあの子の名前を聞いてみよう。
あの子 どこの子
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