短編

□ある学校の一室にて
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地球温暖化と言う言葉は、彼には効かないらしい。
窓の外を見つめる毛利は、珍しく悔しそうな顔をしている。


「ここから出せ」

「駄目です」

「我の言うことが聞けぬと申すか?」

「ええ、聞けません」


いつもは、偉そうな口を利く以外は良い生徒の毛利だけど、こういうときだけは問題児だ。
大体、この暑いのに外に出て、揚句熱射病で倒れるなんて、学年トップクラスの成績が泣くんじゃないかな。


「保健室など、我の性に合わぬ」

「合わぬ、って言われても今は駄目です。暫くここで横になってて。担任の先生には私から連絡しておくから」


そう言って何とか彼を宥めると、やっとベッドに入ってくれた。


「我としたことが不覚だった」

「不覚?」

「日輪を浴び過ぎた。これからは適度に時間を空けて浴びねば」


うん、この子馬鹿だわ。
だって、熱射病で倒れてすぐに太陽のことばっかり考えてるんだから。
毛利にここまで好かれた太陽さまはどんな気分がするんだろう。


「ねえ」

「何だ」

「どうして毛利はそんなに太陽が好きなの?」


いつもなら『太陽ではない、日輪ぞ!』と返して来る彼が、今日は何故か私の質問に対して押し黙っている。
しかも、頬の辺りが何か赤い。


「どうしたの?顔が赤いわよ」

「……な、何でもない!」


一瞬反応が遅かった。
毛利の反応が遅い何て、普段なら絶対ないことだ。
大人しくしていないから、熱が出て来たのかもしれない。


「ちょっと見せて」

「断る!」

「そんなこと言ったって、熱があるかもしれないでしょう?」

「我が良いと言っておるのだ!」


私がちょっと毛利に近付くと、彼は掛け布団を被ってそっぽを向いてしまった。


「毛利、こっち向いてよ」

「どうして我が貴様の言うことを聞かねばならんのだ!」

「ちょっと、先生に向かってその言い草は何?」


と、怒ってはみたものの、口で毛利に勝てたことはない。
こうなったら反骨精神だ。
絶対に毛利を私の方へ振り向かせてやる。


「私は貴方がこっちを向くまで絶対にここから動きませんからね!覚悟しなさいよ」


椅子を引いて、ベッドの脇に座った。
迫力はないかもしれないが、毛利の背中を睨み続けてやる。
少しだけ私を見つめた、潤んだ目にほだされそうになる自分がいたことには、腹が立つので気づかなかった振りをしよう。



ある学校の一室にて

(我に言える訳がない)
(日輪を見るのは、貴様に似ているからだ、などと)




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匿名様からリクエスト頂きました。
ツンデレとのリクだったのですが、難しいです。
むしろ無理です。
とにもかくにもリクエストありがとうございました。感謝!






















こっそりフリー。

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