Three People Travel

□第五話
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 はじめは無言で食べていたが、水も食料も少ないので、すぐに食べ終えてしまった。

 しかし、長年、一緒に過ごしてきただけあって、暗黙の了解ですぐに出発せず、休憩をしていた。

「ねえ、僕は一度も他の国に行った事はないけど、二人はあるの?」

 すると、ヴァルナが、

「俺はこの森の動物がローレスト王国に入ってこないか見張り番をしていた時期があったから、森に入ったことはあるが、その先はないな。」

 なんでもない事のように言っているけど、平和なローレスト王国では一番危険な仕事だということは僕だって知ってる。

 ヴァルの過去は詳しくは知らないけど、孤児院で育って、史上最年少の早さで王族の側近になったらしい。

 何度か、僕と出会う前のことをきいたこともあったけど、小さい時は、上手くかわされたし、最近は、なんとなく踏み込んではいけない気がして、ヴァルの過去はなるべくきかないようにしている。

 そうやって、考えていると、ヴァルがもう話し出していた。

「俺の知る限りでは、ローレスト王国出身者で、隣国まで行った人は居ないと思う。」

「そうなんだ。じゃあ、シンは?」

 ダメ元でシンにもきいてみる。

「俺は、10歳の時からアズ様にお使えしてますから、アズ様がローレスト王国を出た事がないということは、俺も出た事がないということですよ。」

「そうなんだ。」

「ですが…」

 一拍おいて、シンはまた話し始めた。

「俺は多分、ローレスト王国の人間ではないでしょう。しかし、俺には10歳以前の記憶がありません。なので、10歳以前になら、どこかの国に住んでいたかもしれません。」

 シンは僕が生まれる数日前に道端に倒れていて、初めて見る色をした髪と目、奇抜な服装に驚いた町人が王宮に連れてきたらしい。

 その時、シンは自分の名前しか覚えていなかったらしい。

 詳しくは知らないけれど、父さまがすぐに僕の使用人に採用した。

 シンや父さまにどうして僕の使用人に採用したのか、されたのか、何度となくきいたけれども、

 父さまは「秘密だ。」と言って、内緒話を隠す子供みたいな顔をするし、

 シンは「これだけは、アズ様の従者になる前に国王様とした約束ですので教えられません。」と言って、困った顔をするだけ
だ。

 こうして考えてみれば、僕は二人のことをあまり知らないみたいだ。

「さあ、もうそろそろ出発しようか。」

 なんとなく、二人との距離を感じてしまって、これ以上考えないように僕はさっさと歩き出した。



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