お題
□たった一度の恋だった
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「あー、いちょうだー。」
いつからだっただろうか
「ねー見て見て跡部ー!いちょうが舞ってるー!」
「そうだな。」
この金色がこんなに愛おしくなったのは
たった一度の恋だった
俺の少し前をまるでダンスをしているかのようなステップでそいつは進んでいる。
あれは本当にドジだから、転んでしまうんじゃないかなーとか俺は思っていた。
「きれいだねー風にのってるいちょう。いちょう並木ってやっぱりロマンチックー・・・」
「めちゃめちゃ銀杏臭いけどな。」
そういうと目を吊り上げて俺の方を振り向き、とてもステップとは言い難い足どりでこちらにずかずか歩いてきた。
こいつ転ぶなーきっと。
なんで分かるかって?
俺様の眼力に見抜けねぇことなんてねぇんだよ。
こいつが盛大に転べるように俺はあらかじめ少しだけ距離をとっておく。
「なんでそういうこというの!?せっかく気にしないようにして・・・・・うぎゃ」
あーあ、やっぱり転んだ
しかも盛大に顔から。
コンクリートに顔から突っ込むやつなんてこいつくらいしかいないから周りを歩いてるやつらが驚きの混じった目で見ている。
それに気づいたこいつの頬は段々羞恥に染まっていく。
そしてどうやら怒りの矛先は俺に向いたらしい。