捧げ物

□願いの先は…
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視界に映る白。

心乱されるようになったのは何時からか…−。







「神田っ!」

自分を呼び止める嬉しそうに弾んだ声に小さく嘆息した。

振り返れば今ではもう見知った銅のような鈍い赤茶色をした髪の色を持つ少年。その顔はふと思い出していたあの白い少年と全く同じ。
髪の色さえ除けば同じ顔、声である。
嬉しそうに手をふりながら近付いてくるその少年に神田はめんどくさそうに眉をひそめた。




つい先日神田とアレンの二人で担当した任務時に、アレンは奇怪が起こる湖に足を滑らせその身を投げ入れてしまった。

アレンが落ちた時湖が光りアレンは無事戻ってきた、のだが…。その傍らには、髪の色だけ金と銅と違うものの全く同じ顔を持つ少年二人を伴っていたのだ。
落ちた衝撃か、意識を失ったアレンをとりあえずファインダーに預け、姿を表した湖に浮かぶイノセンスを回収してホームへと戻ってきた。

コムイが言うにはやはりイノセンスの作用だろう、と言うことだったが、まだ解明は出来ていないらしい。


いつもならば、自分には関係ないこと、と流すのだが…。

「神田!どこに行くの?」
「何処だって良いだろ」
「鍛練?僕も行って良い?」
「くんな」
「冷たい…」
「んな、面しても無駄だ」
「…チッ」

アレンから分け生まれた(?)金と銅の少年のうち、銅色の髪を持つ少年はいきなり食堂で神田に抱き着き、愛の告白(頬にキス付き)までして以来本体のアレンの目をかい潜っては神田の元へ来て常に傍にいようとしているようだ。
余談だが、銅は本体よりだいぶくだけた口調で気を抜くと途端に口が悪くなるらしい。

最初は、くんな、うっとおしい、と何度も邪険に扱ったのだが銅アレン(皆に命名されたらしい)は構う事なく(寧ろ闘志に火をつけられたらしい)神田を探し出しては傍に寄り付いてくる。
一体どうやって探すのか的確に自分を見つけだす銅アレンに神田は最近諦めの境地に立たされつつあった。


「神田のいそうな所ならわかるから…」

どこにいても見つけだすその様に言葉にせずとも苦虫を噛み潰したような表情を浮かべた時に銅アレンは察したようで苦笑しながら言った。
その言葉にさらに言葉を詰まらせ意味がわからない、と眉を潜めれば、銅アレンは、困ったように、しかしどこか楽しそうに笑って。

「神田のことが好きだからですよ」

ふわり、と、さも幸せそうに微笑んで言った顔は、脳裏に焼き付いて離れない。

だが…

あの白い少年と同じ顔、声で囁くこの少年に神田は心乱されない−…寧ろ…。





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