捧げ物
□素直な気持ち
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コンコン―
部屋の扉が叩かれベッドに寝転がりながら読んでいた本から視線を外しそちらを見やる。
任務や急ぎの用事ならばゴーレムか、もっと大きく声がかけられるはずだが扉の向こうからは待てども何も発せられず、神田は眉をしかめた。
このまま居留守を使おうか…といただけないことを考え再び視線を本へと戻す。
コンコンッ―
先ほどより少しだけ強く鳴らされた音が響く。
用があるなら声に出しやがれ!
苛立ちそのまま待つが扉の前の気配は遠のく気配を見せない。
神田は舌打ちをすると諦めたように本をベッドへ置き扉へと近づいた。
「おい!何か用ならはっきりいいやが……モヤシ?」
怒鳴りながら扉を開けるが目の前に立つ少年と目が合うとその勢いは削がれた。
確か帰還予定は二日後のはず。
だからこそ扉を叩く主はこの少年以外だと思っていたのだ。
「どうした?」
先ほどまでの苛立ちはどこへやら、少しだけやわらかくなった口調。
目の前の少年にだけ許された特権だ。