捧げ物

□願いの先は…
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銅アレンと金アレンが生まれて二日、銅アレンに相変わらず好意を表され、考える時間を邪魔されながら過ごしていたのだが、ラビから二人が消えた、と聞いた。

「そう、か…」

たった二日間の出来事なのにやけに長く濃い日々を過ごした気がする。

あいつは大丈夫だろうか、とふと思った。

どんな形であれ人との出会いに違いない。別れと言うものに慣れはしないだろうと。泣いてなければ良いが…と思う。

「変な奴らだったな…」

ふと心に浮かぶ光景に少しだけ懐かしさを覚え、本当に毒されたな、と笑う。
勝手なことを言って、人の秘めとく予定のものを暴き出しておきながら、消えるときはこんなにもあっさりしたものなのだから。

「ろくでもねぇ奴らだった…」

神田は、遠い空を見上げた。




気分転換にと、いつもの森の中に六幻と共に来た。

今はもう邪魔するものだと誰もいない。
淡々と六幻を振るい型を流していく。

「誰だ?」

かさり、と草を踏む音に神田は姿勢を止め問い掛けた。

「邪魔してすいません」
「モヤシ…」
「モヤシじゃないですってば」
「…なんか用か?」
「用と言えば、用…なんですけど…」

言いにくそうに、視線を泳がせ、両手はせわしなくもじもじと動しているとアレンを見た神田が、不意に近付いた。

「え?」

突然の行動に目をしばたかせていると、神田の手がすっと伸ばされアレンの目許を優しく撫でた。

「赤い…、泣いたのか?」
「なぁっ///」

その行動にもだが、泣いていたことを指摘されアレンは恥ずかしさに顔を赤く染めた。
どうしたものか、と慌てているアレンを他所に神田はアレンの目許を撫でる行為を止めずに口を開いた。

「あいつら消えたんだってな…」
「…はい」
「変わった奴らだったな」
「…ふふ」
「なんだよ」
「銅アレンに神田困らされていたなぁって…」
「…どっちかつーと金だがな…」
「え?」
「なんでもねぇ」

ふと、二人の間に静かな空間が出来た。

甘いような、痛いような少し緊張感を伴って。

「あの、神田…」
「なんだ?」
「用があるって言いましたよね?」
「そういえば言ってたな」

神田に見つめられ恥ずかしさから少しだけ瞳を伏せた後、アレンは決意を秘めた光を銀灰に燈らせ神田を見つめた。

「…聞いて欲しいことがあるんです」
「…俺も言いたいことがある」





二人の思いを柔らかな風が見守っていた−−。









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